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ワンライ⑤
お題:トラウマ、噛み癖
───あ、あっ、アアッ!
挿入された快感より、内股を噛まれた痛さでイきそうだなんて知られたくなかった。痛いのが気持ちいいなんておかしいと思った。
だから僕から別れ話を持ちかけて、強引に関係を切って逃げた。
その後も何人かの人と付き合ってそういう雰囲気になったけど、また噛まれるんじゃないかってトラウマになっているのか、思ったようにうまくできなくて、結局僕から別れ話を持ちかけてばかりだった。
当然長続きなんてするはずもなくて、ここ一年は一人で過ごしてる。
時間の経過と共に薄れていく過去の記憶。
あんなに人肌恋しかったのに、今では一人が楽かもとか思いはじめてた。
今日も呑気に、夕飯のメニューを考えながら帰り道を歩いている時だ。
「みぃつけた」
どこからともなく現れた、聞き覚えのある耳に馴染んだ声に呼び止められた。
ああ、立ち止まるんじゃなかったと思ったのは振り返った後だった。
ほぼ拉致されるように、僕の家へ真っ直ぐ向かった男の背中に胸騒ぎが止まらなかった。
家に着けば靴も脱がずにベッドへ放り投げられ、安物のベッドが悲鳴を上げた。
「久しぶり」
「ッ・・」
跨がられ、逃げられない僕に笑いかける男は、紛れもなく僕が一方的に振って逃げた相手。
あんな別れ方をしたから恨まれても仕方ないと思ってはいたけど、実際に起こると怖さと気まずさで何も言えない。
一言、謝ることさえ出来ない。
でも、どうにか絞り出した謝罪に男は不満そうだ。
「ぶっちゃけると、噛むとよがりまくるのを知っててわざと噛んでた」
突然の告白に心臓が止まるかと思った。
「最初はなんとなく甘噛みしてみただけだったけど、お前の柔らかい肌に歯形がつくのが堪らなくて、噛み癖がついてた。もっと色んな所噛みまくって悶えさせたいって」
なのに、と続けた彼は突然僕の首筋に噛みついた。
久々に味わうこの快感・・・。
誰としても満足できなかったのに、一噛みされただけでここまでクるとは思わなかった。
「あ、あっ・・」
噛まれた首が痛い筈なのに、下半身が熱くて熱くて堪らない。
「ああ・・、やっぱお前の肌が一番だ」
赤くくっりついているだろう跡を嬉しそうに見つめる彼に、僕はまた心を奪われた。
[end]
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