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ワンライ②
お題:まばたき、明日の朝ご飯、顔色
今日こそ別れ話を・・・。
そう決断するのはもう何度目だろう。
待ち合わせ最中に何度も何度も心の中で繰り返してイメージして覚悟を決めているのに。
「恵(けい)」
夜風を纏ったよく知る匂いに俺の決心は揺らぎだし、
「待った?寒かったろ」
「暁人(あきと)さんの方が寒そうだけど」
冷えた手を温めるように握られ笑いかけられる頃には、もう俺の決心はなし崩しになっている。
こんな関係もう辞めなきゃダメだとわかっているのに辞められない。暁人さんが俺を求めてくれているなら俺はそれに応えたい。俺が必要ならなんでもしてあげたい。
結局、俺の本心こっちなんだ。
夕飯にラーメンを食べて俺の家に向かった。
仕事帰りに待ち合わせをして外で夕飯を食べて俺の家に向かうのがいつもコースだ。
「本当、いつ来ても綺麗にしてるよね」
暁人さんの為にね。
そう言いたいけど厚かましい奴って思われなくないから言わない。暁人さんにとって俺は居心地のいい場所でいたいから。
自分でもびっくりするくらい暁人さんが好きだ。
だから俺の決心なんて暁人さんを目の前にしてしまえば何の意味もなくなってしまう。
嫌われたくないからうるさいことも我が儘も言わない。
暁人さんの顔色を伺って行動したり発言したりするのは、正直疲れる。けど、俺の立場からしたらその位しないと傍にいられなくなりそうで・・・こわい。
二人きりの空間が嬉しいのにそんな事ばかり考えてしまっていつも気分が落ち込んでしまう。
「恵、元気ない?」
顔に出さないようにって気を付けているのに暁人さんにバレてしまうことはよくある。
「ううん、違うよ。仕事で疲れただけ」
後ろから抱き締めてくれた暁人さんに向き反って甘えるように抱きつく。
「じゃあ、今日はこのまま話でもしながら寝る?」
「大丈夫だから抱いて欲しい」
気遣ってくれた暁人さんは頭を撫でながらそう言ってくれたけど俺は即答した。
少しでも俺という存在を暁人さんの中に残したい。
俺にできることはそれだけ。
「じゃあ無茶しない程度にね」
優しく啄まれるキスに俺も必死に応えて二人してベッドに凭れこんだ。
数時間後、暁人さんは俺の隣で眠たそうにゆっくりまばたきをしている。
「恵、明日の朝食は和食がいいな・・・」
「・・・うん、わかった」
俺の返事を聞くと暁人さんは眠りに落ちたようだ。
「とか言ってさ、いつも朝になるといなくなってるくせに・・・朝ご飯なんて一緒に食べたことないくせに」
顔にかかった髪を指で掬ってほっぺをむにゅっと軽く抓ってみる。
嫌いになれたらしいどんなに楽か。
すぐに振ってやるのに。
奥さんと別れて欲しいってまでは言わないから、たまにでいいから、朝起きたときに俺の隣で寝ていて欲しい。
暁人さんが起きたときに気付けるようにと、勝手に腕枕をして、もう片方の手を腰に巻いて手を繋ぐけど、仕事と暁人さんとのセックスで俺はクタクタでいつも熟睡してしまう。
朝起きたときの虚しさに心臓が締め付けられ、今度こそ別れ話を・・・と、また意味のない決意を繰り返すんだろう。
[end]
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