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ワンライ③
お題:金平糖、着物、こっそりキスを
花とは無縁そうな、このがたいのいい男が僕にこれを思ってくる日は下心がある時だ。
「ほら先生、金平糖」
ほのかに広がっていく砂糖の優しい甘さ。
金平糖を僕の口に放り込むと、花屋は僕が舐め終わるのをじっとこちらを見て待つ。
溶けないで欲しい…と思いつつ、どんどん小さくなっていく金平糖と共に僕の心臓はうるさくなる。
────────
僕の好物を持ってこられたら、あなたの要求に応えます。
好きだと告白され、抱きたいと率直に言われた。
普段、自分のことをあまり他言しないように気を付けている僕からの問題に、答えは返ってこないと高を括ってそう言って逃げた。ただの冗談だと思っていた。
けど、一週間もしないうちに花屋は僕の好物の金平糖を持ってきたのだ。
「俺を誰だと思ってる?花屋には色んな人がくるんだ。お喋りな奥さんもな」
頼んでおいたカスミソウを受け取る瞬間に抱き寄せられた。
「この着物をどう脱がせようかってばかり考えてた」
「あ、あれは言葉のあやってやつで」
着物の袖口から腕を撫でられゾクリと鳥肌が立った。そのまま強引に体重をかけられ畳の上に押し倒されてしまった。
「素足に足袋ってエロいな」
「僕の話を聞いて下さいっ」
「綺麗だ先生」
好きだ・・・。
間近で囁かれて、僕の心が許すように体から力が抜けた。
一日中水仕事をしているからか、花屋の指先だけはひんやり冷たかった。
力強い腕に抱かれて、あんなに気持ちいい感覚なんて知らなくて、僕は簡単に理性を手放していた。
初めて男の人に抱かれ、後孔を開かれても嫌な気持ち一つしなかったのは、どこか僕もこの花屋に惹かれていたからなのかも知れない。
満足そうに隣で寝ている花屋にこっそりキスをして、そっと手を絡めた。
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