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基が出ていく。こんなことしたいわけじゃなかった。
空海は手に持ったシャツを握りしめると。散らばった衣類をかき集め、ぐいぐいと引き出しに押し込んだ 。
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彰が大地を招き入れた部屋は、基や空海の部屋と違って、ただ大きなベッドがあるだけの寝室。
「凄い……。これ、キング……?」
大地は吸い寄せられるようにベッドの前に立ち、感嘆の息を漏らす。
「まあな。大地の個室も用意してやりたかったんだが、他に余ってるの納戸だけでな。あそこは窓もないし狭いから、流石に申し訳なくて。それに、空海にもベッド用意してやりたかったし。なら、いっそのこと俺たちのベッドを大きいのにしようって基と話してな」
「嬉しい……本当に、一緒に暮らすんだね」
「そうだな」
「これから毎日、彰さんと一緒にいられるんだね……」
「ああ」
言葉を紡ぎながらゆっくりと歩を進める彰の腕が大地を包み込む。
「なんだか、幸せ過ぎて夢みたいだよ」
「夢じゃない。現実だ」
その証拠にと、交わされる口付け。確かにそこに温もりがある。背中から伝わる鼓動がある。
「ん……もう一回‥…」
離されたくちびるに物悲しさと愛おしさを感じ、大地は体を捻って彰にねだる。
「彰さん。大好きだよ」
「俺も大地が好きだ」
もう一度交わされる唇の温もりを堪能していると、それを遮るかのように大きな物音がした。
「なんの音だ?」
驚いた二人が慌ててリビングへと向うと、基が鍋を散乱させていた。
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