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第1章第60話

俺が頭を抱えていると 広瀬さんのポケットから着信が。 「悪いこの後仕事があるんだ 2人で少し話すといい、じゃあね大和君、 はい────もしもし」 ちょ、広瀬さん……。 広瀬さんは電話に出ると そのまま出てってしまった。 ま、マジか……………………。 恐る恐る逢坂に目をやれば ニヤリと俺の方向へ向き直り ツカツカ近づいてくる。 思わず後ろに怯みそうになった俺の 顎を掴み俺の顔を引き寄せた。 「なっ………………」 顔の距離僅か数センチ……。 「お前暁はもう抱いたの?」 少し長めの前髪から強い眼差しが覗き 口元が上がる。動揺してる 俺なんてお構い無しだ。 「な……なんでそんな事」 俺は逢坂の手を振り払いキッと睨みつける。 だが、逢坂はクックと笑いだし 「その様子じゃまだみたいだな」 そう言ってドカッとソファに座り込んだ。 「う、うるさいお前に関係ないだろ」 俺は顔真っ赤にして声を荒らげる。 駄目だ……これじゃこいつの思うツボだ。 逢坂は余裕綽々の顔でネクタイを緩めると 「暁を泣かせたら俺が黙って ないからなよーく覚えておけよ」 「くっ……お前に言われなくても 泣かせるつもりなんかない」 「あ、そっ……まあ様子は見させてもらう」 くっそ────この余裕が 尚更ムカつく。 こいつとこれからずっと一緒かよ。 信じらんねー暁────助けてくれ………………。

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