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第1章第89話
だけど、何とも言えない雰囲気が流れる。
「ごめんね、変なとこ見せちゃって」
広瀬さんは苦笑いしながら
もいつもの口調に戻る。
「あ、いや……すいません」
「はは、いいよ大和君が悪いんじゃない、
場所を弁えない彼が悪い」
そ、それなんですけど。
どう言う事か説明して欲しい。
「あ、あの………」
訊きづらい……でも知りたい。
2人向かい合う形で座ると
広瀬さんも大人な訳で
俺が訊きたい事は当然分かる。
「付き合ってるの、彼と一応ね」
うわ単刀直入。本当に清々しいくらい。
つまり暁が言っていた逢坂の恋人は
広瀬さんな訳で、俺が物好きだと
思っていたのはまさしく広瀬さん……。
「俺がさ、まあ逢坂と付き合ってるから
暁が大和君を好きって分かっても
俺には反対する権利もないし、
暁はさ本当に一生懸命仕事してきて
1度も我儘とか言った事無いし
だから大和君に
逢いたいって言い出したのも
あの子の性格上
本気なんだって分かったから」
「…………………」
「差別とか偏見とか
元々持ち合わせてないしね、
暁はノンケだし迷いはあったみたいだけど
俺達見てるから直ぐに吹っ切れたみたい」
そう言っていつもの
爽やかな笑顔を向けらた。
「あ、あの……広瀬さんは
男の人が……その」
広瀬さんは一瞬目を
丸くして暫くして笑い出した。
「俺はノンケだよ」
へ?つまり……俺と同じって事か。
いやいや待て。
「じゃあ……逢坂が?」
「はは、彼は両刀、女の子も好きだよ!
たまたま今の相手が俺なだけ」
そうなのか……知らなかった。
訊きたい事は山ほどあるのだけど
とりあえず今は暁の忘れ物。
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