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第1章第116話

撮影が終わって楽屋に戻る。 流石に疲れた……。 「暁大丈夫か?」 司は心配そうに声をかけてくる。 「うん、大丈夫だよ」 僕は鏡越しに笑ってそう言った。 本当は正直クタクタ。 撮影続きの上、 あのカメラマンとの仕事。 睡眠も取れて2、3時間が ずーっと続いてる。 でも仕事だからしょうがない。 「司……次なんだっけ?」 司はちょっと眉を寄せながら 「雑誌のインタビューが3本、 その後また撮影」 「そっか分かった」 「暁?ちょっと無理してない?」 僕はメイクを直しながら 司にチラリと視線を送る。 「大丈夫だよ、頑張るから」 「………………」 僕の返答に司は黙ってしまった。 多分僕が無理しているのは 重々承知しているんだろ。 でも司は悪くない。 スケジュール上 外せない仕事ばかり。 これ以上は削れない。 今は大切な時期。 使って貰える内にやらなければ 仕事は直ぐ無くなる。 この業界は厳しい。 使えないものは容赦なく切り捨てる。 みんな必死に仕事こなして生き残る。 睡眠時間ないなんて言ってらんない。 特に僕なんて女装で特殊。 一歩間違えればスキャンダル なんて直ぐ。 マスコミなんて書きたいように 書くだけ。真実なんて関係ない。 だから僕は人一倍 頑張らないとダメなんだ。 人と同じではいけない。 この業界で生きてくなら、 それぐらいの 努力しないと潰されてしまう。 何より司に迷惑を掛けたくない。 僕に殆どの時間を 費やしてくれているのだから。

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