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第1章第120話

病院の廊下は走ったらいけない。 分かっているけど 今はそんな事守れない。 暁────暁っ。 俺は病室の前に来て 息切れしたままドアを開けた。 「暁────」 その瞬間広瀬さんが ベッドサイドでシーと 指を口にあて、 俺は思わず口を抑えた。 俺は静かに中に入ると 暁は真っ青な顔で 眠っていた────。 「あ、き────」 「今薬効いて落ち着いたから、 いきなりビックリしたろ? ごめんね、暁が撮影中に 珍しくトイレに 立ったから見に行ったら げーげー吐いてて……」 「…………….......」 広瀬さんも疲れた様子で 溜息を吐きながらこう言った。 「俺の管理不足だ、本当にすまない」 そう言ってその場に立ち 深々と頭を下げた。 「ひ、広瀬さんやめてください」 「これはマネジャーである 俺の責任なんだ」 「……..............」 「診断は寝不足と過労による モノだそうだ、 弱音を吐かない暁に甘えて 無理をさせ過ぎた」 俺は言葉が見つからない。 忙しいとは思ってたけど そんなに過密スケジュールだった なんて俺は何も知らない。 「暫く暁は休ませる今は安静が必要だ」 暁を見るとただでさえ 痩せているのに(やつ)れた気がする。 「でも仕事は?」 本音じゃないけど 建前上訊いてみる。 「暁はスタッフには信頼されてるから 大丈夫、何も心配しないで? 意識戻ったら 帰宅してもいいみたいだから、 ただ暫くは安静にさせて」 俺は勿論頷いた。 暁ごめんな。 恋人なのに何も知らなくて…。 本当にごめんな────。

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