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第1章第121話

俺が病室に来て1時間。 暁の手がピクッと動いた。 俺も広瀬さんも暁の名を呼ぶと 暁はゆっくりと目を開けた。 「ん…………」 「「暁」」 視点が合わないのか視線が泳ぐ。 まだ青い顔でゆっくりこちらを向いた。 「…………ぼ……く」 「病院だ……倒れたんだよ」 広瀬さんが心配そうな 声で静かに答えると ようやく意識がはっきりしたのか 暁は青い顔を更に青くしてこう言った。 「さ、撮影────」 暁は無理矢理にも 起き上がろとするけど 力が上手く入らないのか 身体を起こせないでいる。 こんな時に────。 「暁、無理だよ────」 俺が言う前に広瀬さんが暁を宥め 再びベッドへ寝かせる。 「………………っごめんなさい」 その言葉を漏らした瞬間 暁の目からは涙が零れた。 なんで?倒れたのは暁だ。 辛いのも暁だ。 なのになんで暁が謝る? なんで泣いてるの? 「暁、謝るのは俺だよ、 悪かった気付いてやれなくて、 仕事は当面キャンセル するから今は身体を治そう」 「でもっ…………」 暁の涙は溢れ辛い顔をしてる。 「なんで?調子悪いだよ? なんで暁が泣いて謝るのさ」 思わず俺は病室で大声を出した。 暁が倒れて──── 俺は心臓が止まりそうだった。 なのにどうして────。 「や…ま………と……っ」 「大和……君」 あ、あれ…………。 視界が……そう気づいた時には 俺の頬に伝うものに気づいた。 俺は零れる涙を拭いながら 暁を無意識に抱きしめる。 「────やま……と」 久しぶりに抱きしめたその身体は 唯でさえ細いのに、少し 小さくなったように思えた。 「……暁、仕事の事は 俺が責任を持つから 今は休もう……な?」 暁は納得した感じでは無かったけど、 俺がギュッと抱きしめて離さないから 静かに頷いて俺を抱きしめ返した。

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