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第2章第4話
暁side
今日は仕事が早めに終わり、
今は司の車の中。
「そう言えばオーディション
どうなってるの?」
司は相変わらず安全運転で
ミラー越しに僕を見る。
「気になる?」
そりゃなるよね?
僕は後部座席に凭れながら、
少しソワソワする。
「大和君なら残ってるよ」
それも大事だけど他が気になる。
「他には誰?」
「強敵なのは神崎流風だね。
知ってるだろ?」
僕は手元の雑誌を捲り、
確認をした。今人気の彼か。
ちょっとチャラそうにも見えるけど。
「今チャラいとか思ったろ」
本当、司は誤魔化せないな。
僕は軽く頷いて笑った。
「確かに見た目はチャラいけど、
仕事の評判はかなり良いよ?
真面目で意識高いそうだ」
そうなんだ────。
確かにこの世界見た目じゃ
把握出来ない事が沢山。
でも────じゃあ大和は?
そう訊きたかったけど、
僕は言葉を飲み込んだ。
仕事に私情を挟んだらダメ。
司も察したのか
大和の話はしてこなかった。
この世界は自分で
チャンスを掴まないと。
気持ちは大和か良いって
思うところが無いわけじゃない。
それでも僕に選択肢が
ある訳じゃないから。
僕は窓に視線を向け、
見慣れた景色を眺めながら
気持ちを奥へとしまい込んだ。
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