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第2章第5話
大和side
何とか撮影こなして楽屋。
ついつい慣れない緊張感で
溜息が零れた。
コンコン────、
張っていた空気が緩んだ直後、
ドアのノック音。
俺が軽く返事をすると
逢坂だと思った相手は神崎だった。
俺は内心ビクンとしながら
ちょっと不機嫌そうに訊いてみた。
「なんですか?」
だけど俺の態度を他所に
神崎は軽く笑って入って来る。
「一応挨拶と思ってね……、
気分を害したなら謝るよ」
ムッ────チャラい癖に
大人な対応じゃないか。
俺の方が子供みたいだ。
気は乗らないが礼儀として
一応挨拶を交わし握手。
すると────、
「デビューして直ぐなのにやるね。
九条君もAKIちゃんのファンとか?
でも同じ事務所だもんね、
ちょっと羨ましいな」
ファンに違いないが俺は本気惚れ
してるとは言えない。
「何故羨ましいんですか?」
「だって会う確率高いじゃない?
偶然でもいいから会いたいよ俺は」
神崎ってめっちゃファンなんだな。
でも男ですよ?と突っ込みたくなる。
もし男と知ったら
この人はどうすんだろ?
いやいや、こいつは暁の
相手になるかもしれない敵。
俺は負けられないんだ。
「まあそこを妬んでも
始まらないから、
オーディションで勝たせてもらう」
「…………………」
俺だって負けない。
内心はそう思っていたのだが、
あっさり神崎がそれだけと
楽屋を去って行ったので、
結果俺はなんにも言えないまま
ポツリと楽屋に残された。
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