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第2章第41話
散々泣きはらし、ようやく涙も止まった
頃、司は静かに話し始めた。
「暁、もし俺に罪悪感を覚えているなら
暁の所為ではないからね」
僕は司の言葉に身体を震わす。
「でもっ……」
いけない、やっと止まった涙がまた溢れてしまう。
「暁、訊いて」
司は顔を背ける僕を向き直させ、
表情は穏やかにゆっくりと話し始めた。
「確かに、俺が一緒に仕事がしたくて
暁をこの世界に誘ったよ? それは
俺にとって凄く幸せな時間で、
暁がこの仕事を好きになってくれて、
誇りに思ってくれて真面目で一生懸命仕事に
取り組んでくれた事、本当に嬉しかった」
「だったら――っ」
僕は司の言葉を遮るように声を
振り絞る。でも目の前の顔は一瞬
驚いた表情を見せ、また穏かな表情へと
変わっていった。
「暁、今までと現在 は違うでしょ?
今までは仕事を一番に考えられる環境だった。
でも、今の暁は仕事以上に大事な物ができた。
優先すべき対象が変わったんだよ」
「……」
「俺はね、暁には笑っていて欲しいんだ。
これから先、暁には苦しい事が沢山増えて行く中で、
大好きな仕事が暁の笑顔を奪うだけなら、
俺はやり続けろとは言えないし、望まない」
僕は司の言葉に必死に返事を探すけれど
どう応えるのが正しいのか解らずに泣きそうな
顔しかできず。司はそんな僕を抱きしめた。
「暁、俺との約束覚えている?」
勿論覚えている。忘れた事なんて
一度もない。僕は腕の中で必死に頷く。
「時期が来たら男の子に戻る、そう約束したよね?」
頷きながら僕は司の胸に顔を埋める。
デビューする時、司と約束を交わした。
それは女の子でと決まった後の事。
元々まだ学生で未成年と言う事もあり、
プライベートを保証する為に女の子
でやろうって司が言い出した
でもそれは一方で仕事の幅を狭めてしまう。
いつか限界は来る……。きっと僕なら必ず
そこまで育つってあの時の司は言った。
だから、時期が来たら男のだと公表しようと
約束をしたんだ。でも、
それは同時にバッシングも
受ける覚悟と言う事。
納得しないファン、マスコミは
きっと少なくない。
「俺はね、暁なら乗り越えていけるって
思っていた。その魅力もあるって。
でも、今暁には守りたいものが出来た。
その約束がいつか、なんらかの形で大事な人を
傷つけ苦しめる可能性も、暁がそれ以上に
苦しむ可能性もずっと高いって。
そうなった時、暁に選択肢がないのは、
絶対に違うから、俺は辞める事も選択肢の一つだと
言っておきたかったんだ。
だから暁が泣く事なんて一つもないんだよ」
司はいつだって僕の事を
第一に考えてくれる。
いつも僕に寄り添い、
僕の立場で一番近くにいてくれる。
司がそういう人だから、
僕はこの世界に飛び込んだんだよ。
この仕事が好きになれたのも、
誇りなのも全部司がいてくれたから。
だから泣く事しか出来ない僕でごめんね。
だけど、司に伝えたい。
「……ありがとう」
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