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第2章第8話
ジャケットどう返そうか……。
睨めっこしてると司が戻って来た。
「お疲れ暁」
「う、うんお疲れ様」
僕は化粧すら落としてない始末。
慌てて鏡に向かうと司が訊いて来た。
「暁、顔色悪いけど具合悪い?」
僕は鏡越しにブンブン首を振る。
「なんか遭った?」
ぎくっ────やっぱり鋭い。
でもバレたらダメッて言ってたし、
助けてもらった上、
僕から話したなんて失礼。
「何にもない」
司は納得しない顔で続ける。
「そのジャケット見なれないけど
どうしたの?」
しまった────隠すの忘れてた。
「さ、寒いからスタッフが
貸してくれたの。
後でクリーニングして返すから」
「そう?なら良いけど」
少し疑っている様子だけど、
それ以上突っ込まれる事は無かった。
僕はその日司に初めて嘘を付いた。
ごめんね……後でちゃんと話すから。
同時に大和にも秘密が出来てしまった。
なんだが胸がモヤモヤする。
結局、それから間もなくして
神崎さんとは再会するのだけど、
この状況────内心複雑。
でも仕事は仕事、
僕はとりあえず
気持ちを隅に追いやった。
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