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第2章第44話
大和side
今日の出来は三十点。
全然集中出来なかった。情けない。
また逢坂の雷が落ちるんだろうと
覚悟していたのだが、逢坂は黙って
楽屋に入って来ると、ソファに腰掛ける。
朝の事もあるし、俺は逢坂に触れず黙って
帰り支度を始めた。俺の頭の中は
朝の会話で頭がいっぱいでオーデイションの
結果はどこかへ吹っ飛んでいる。
結局、俺の身支度を終え、
アパートに送ってもらうまで
会話一つなかったのだが、
俺が車を降りかけた時、
ようやく逢坂の口が開いた。
「大和、オーデイションの結果だけど
神崎に決まったから」
あまりに突然の出来事に
俺は声すら出せず、逢坂は
お疲れとそのまま車を発進、
あっという間に見えなくなった。
俺は暫くその場に立ち尽くす。
「神崎……」
暁の相手役が自分じゃない……。
そう理解した時、俺は初めて悔しいと
実感した。外はまだ冷たい空気。
俺は肩を落として部屋に入った。
暁はこの事をもう知っているのだろうか?
俺はスマホを手にして固まった。
一体なんて連絡するつもりだ?
そう考えたら打ちかけたメールの
手が止まり、悔し涙が零れた。
自分は暁の何も分かっていない。
朝そう気づかされて、仕事はまともに
出来ず、オーデイションすら持っていかれる始末。
あまりに情けなくて無様で、
俺は暗い部屋で蹲り泣く事しか出来なかった。
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