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第2章第45話

 ピンポーンと部屋のチャイムが鳴り 暗い部屋で蹲っていた俺は顔を上げる。 時計を見れば深夜一時。誰だこんな時間に。 俺はインターホンにも出ず不機嫌そうに 直接玄関を開け固まった。 「……」  そこには着の身着のまま、 この時期にしては薄着の暁が立っている。 「どうしたの、こんな時間に こんな格好で ……」  俺が驚いた表情を見せ声を掛けると、 暁は迷わず俺に抱きついた。 「大和に会いたかったの……」  腕の中の暁はそう言って更に抱きつく。 心なしか僅かに震えている身体に俺はハッとなる。 「……とにかく中へ入ろう」  俺は抱き着いて離れない恋人を 玄関へと招き入れる。こんな時間に 大事な恋人の訪問。しかも薄着で 腕の中にしがみつく姿に正直戸惑っていた。  多分いつもなら両手を広げて 大喜びするんだろうけど、 今の俺はどんな顔をして、 どんな言葉を掛ければいいのか 分からない。 「……暁?」  戸惑う俺の声。 抱きつく腕は更にきつくなり 埋まった場所から小さな声がする。 「……大和に会いたかったの」  普段なら迷わず俺もって 抱きしめるんだろうけど……。 俺の手は迷ったまま抱きつく身体に 触れられないでいた。  俺は少し考え頭を整理。 とにかく謝ろうと言葉にする。 「暁……ごめん……俺……」  そう言いかけて暁はまるで 俺の言葉を遮るようにこう言った。 「抱いて……」  え!?突然の恋人の申し出に 俺は思わず目を丸くした。 でも、目の前の顔は今にも泣きそうで そしてあまりにも真剣な眼差し。 応えられないでいる俺を見て、暁は もう一度言葉にする。 「抱いて……」  一度は離れた身体を暁は再び 擦り寄るように密着させ 俺に回す腕に力を込めた。 いつまで経っても抱きしめ返さない 俺に焦れたのか暁は腰に回していた 腕を首に巻き付け自ら俺の唇を奪う。 俺は一瞬目を見開いたけど、 暁がくれる甘い口付けに理性など 簡単に吹っ飛んだ。

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