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第2章第11話
扉の向こうで司が
説明に入っている。
神崎さんとは初めての仕事。
だから正体を明かさねばならない。
耳を澄ませば聞こえてくる司の声。
「今から本人に会ってもらいますが、
もしその時点で仕事が出来ないと
判断した場合、辞退して頂いて
こちらは構いませんので」
神崎さんとマネージャーの声は
聞こえない。今どんな顔をしてる?
どんな反応をする?
珍しく緊張する────。
僕が胸元に手を置いた瞬間、
扉が僅かに開いた。
「暁いいよ、入って」
僕は黙って頷くと、
男の子の姿のまま神崎さんの前に
姿を見せた。
「……………………」
目に飛び込んできたのは
ビックリした表情の2人。
言葉はない────。
やっぱり駄目か……。
その瞬間ホッとする自分と
そうではない自分がぶつかった。
「…………男の子マジ!?」
複雑な心境の中、声を上げたのは
神崎さん。僕は仕事だと
言い聞かせて真っ直ぐ前を見た。
「初めましてAKIです、
宜しくお願いします」
僕は深く頭を下げ挨拶をした。
「さっきも言いましたが、
こちらは辞退して頂いても構いません。
どうするかは神崎さんに
判断をお願いします」
司の真剣な言葉。
目の前にいる彼はどう答える?
「断る?そんな事しないよ。
ビックリはしたけど、
ますますファンになったよ!」
え!?どう言う意味?
「神崎流風です宜しくね」
彼は物凄い勢いで目の前に
来ると、にこって微笑んで
握手を求めてきた。
僕は言葉の意味が分からなかったけど
ゆっくり手を差し出して
握手を交わす。
「私は流風がいいなら問題ない」
彼のマネージャーは納得する。
司はゴホンと咳払いをすると口にした。
「あの、この事は今は他言無用で」
「言わないよ。俺はAKIちゃんの
ファンだからマイナスになる事
なんてしない!マネージャーもいいね」
神崎さんの勢いに僕も司も
少々タジタジ。マネージャーは
分かってるよなんて頭を掻いた。
「有難うございます。
あの司、少し2人で話をさせて」
司はハッとして、
分かったと許可してくれる。
僕は神崎さんを連れ
とりあえず楽屋に戻った。
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