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第2章第14話
撮影当日、俺は逢坂と共に
スタジオ入りした。
楽屋で支度を済ませれば
今までにない緊張でソワソワ、
そんな俺に逢坂も呆れ顔。
コンコン────、
楽屋にノック音が響き
ウロウロしていた俺は
ピタリと足を止めた。
逢坂が招き入れたのは司さん。
けれどいつもと雰囲気が違う。
「今日は一緒に仕事させて頂きます」
改まった挨拶、司さんはペコリと
頭を下げこちらに向き直る。
「九条君、今日は宜しくね?」
あれ?名前じゃない…………。
ボケっとしてると、
逢坂はバシッと頭を叩き
俺の頭を無理矢理下げさせた。
「悪いな、まだ礼儀を知らないんだ」
うっ、そんな言いた方しなくても。
司さんはクスッと笑うと
直ぐに真面目な顔に戻る。
「撮影前にAKIに会う?話せるけど」
へっ?と俺が馬鹿面下げると
逢坂は冷めた口調で言う。
「いやいい、そのまま撮影入るから」
「なっ…………」
会いたいと言うつもりが
勝手に断られた!?
ちょ───待て待て。
「そう?分かった、じゃあ撮影で」
司さんも納得して出ていくし
俺の意思は!?
口をパクパクさせてると、
逢坂は頭を掻きながら
吐き捨てるように言った。
「撮影前に会ったら、お前は
舞い上がって鼻の下伸ばすだろ?
そんな余裕があるのか?」
ぐぬぬ────悔しいが
こいつの言う通り。
女の子の姿で目の前に現れたら
きっと我慢出来ない。
俺は己の未熟さを痛感しながら
気を取り直してスタンバイ。
先にスタジオ入りした。
ドキドキする事数分。
スタッフの声に出入口に
目をやれば、暁は白い衣装を
身にまとい礼儀正しくスタジオ入り。
久しぶりに見た姿は
大人の女性に変貌した
美しも艶やかな暁がそこにいた。
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