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第2章第22話
暁side
僕が楽屋に戻ると
司は珍しく笑ってない。
「暁、着替えもしないで
どこ行ってたの?」
答えなくても分かってる癖に。
僕が答えないと司は
少し厳しい口調になる。
「気持ちは分かるけど
控えないとダメだよ」
分かってる……。
「ごめんなさい……」
司の駄目出しに
シュンとした顔で
鏡の前に腰を下ろすと
司は僅かに溜息を吐いた。
「ねぇ、今日このまま
帰ってもいい?」
恐る恐る訊いてみると
司は更に頭を抱えた。
「しょうがないな……今日だけだよ?
なるべく控えてね」
司は厳しい顔してるのに
許してくれる。優しいんだ。
マネージャーの立場としては
軽率な行動は控えて欲しい。
それが司の本音。
分かってるんだけど……
気持ちが先走る。
申し訳ない気持ちを抱えたまま
僕は化粧だけを落として
帰る支度をした。
「一緒に帰るのか?」
あ、言い忘れてた。
僕は頷くと司は
しょうがないなとまた溜息。
本当にごめんなさい。
「結果は数日に出るよ?
それだけは頭に置いといてね」
「うん………」
大和か神崎さん。
どちらにしても
僕に選択肢はない。
初めてかもしれない。
仕事でこんなにモヤモヤ
した気持ちになるのは。
だけど今は黙っていよう。
言っても皆困るだけ。
僕は複雑な気持ちを
胸の片隅に置いて
大和と帰宅した。
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