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第2章第51話

 写真集の撮影は南国のリゾート。 僕は司と共に一足早く日本を離れた。 暫く生活拠点になるホテルにチェックインして 僕は海が一望できる部屋で一息吐いた。  あれから一週間、大和から連絡はない。 日本を離れる時、ようやく買えた 大和のデビュー雑誌。そこに写るのは いつも優しくて甘い彼ではなくて、 クールで大人な表情したかっこいい姿。 感想……伝えたかったな。  コンコン――。 雑誌を抱え色んな思いに耽っていると ドアのノック音。僕は雑誌を仕舞い込んで 扉を開けた。 「暁、体調はどう?日本を離れるの 久しぶりだから時差ボケ少しあるんじゃない?」  司は心配そうに僕の部屋へ入って来る。 「少し眠いけど直ぐなれるよ」  あの日、辞めていいんだよって言われた あの時から司とも大和については話をしていない。 僕も話さないし、司も訊いて来ない。 「撮影は来週からだから、ちゃんと休んで 体調万全にしておいてね」 「わかってます」  司はスケジュールがびっしり書いてある 手帳と睨めっこ。難しい顔しているな。 「ねえ、神崎さんはいつこっちに来るの?」  司は手帳からこちらに視線を向ける。 「明日にはこっちに来ると思うけど」  僕はそうと頷くと司は手帳を閉じた。 「暁、この仕事……」  そう言って途中で止めてしまう。 「大丈夫だよ。心配しないで。 ただ撮影前に神崎さんと少し話を してみたいと思っているだけ」    僕の言葉に目の前の顔は少し驚いた 表情を見せる。けれど、それも一瞬。 直ぐに司の表情はいつもの優しい眼差しに変わる。 「不安とかないの?あるなら 言って訊くから」    僕は腰を下ろしていたベッドから 離れ海が広がる窓際に立つ。 目の前は気持ちいいぐらいの青が広がって 僕は一呼吸して口を開いた。 「何も心配しなくていいよ。 僕は僕の仕事をやるだけだから」  嘘ではない。確かに不安がゼロか と言われたら違うけど、大和だったら 良かった……その気持ちは不思議と消えていた。 「……いい仕事が出来るといいね」    背中越しの司の言葉に僕は静かに頷いた。  今は後悔のないようにその思いだけ。 もし僕がこの仕事を辞める時が来たとしても 司と出来る仕事を全力でやり遂げる。 そう決めたから……。

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