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第2章第53話

 その後直ぐに神崎さんは長居したら悪いからと この日は早々に部屋を後にした。 僕は一人部屋に残されベッドへ転がる。  なんだか眠い……。僕はいつの間にか 眠りに落ちていた。  どれくらい経っただろう。 どこからともなく司の呼ぶ声。 「暁……暁」  僕はまだ眠い目を開け ボーっと声のする方へ顔を向けた。 「なんにも掛けないで寝たら風邪引くよ」  ようやく頭がはっきりして周りを見ると、 窓の外は既に明るく、カーテンすら閉めずに 寝ていた事に気づいた。 「僕、寝ちゃってたんだ」  司は僅かに溜息を吐いた。 「神崎君こっちに来たよ」 「あ、うん知ってる。昨日挨拶に来てくれた」 「そうなの?」  僕はうんと頷くと司はそうかと一言。 「暁、何も食べてないんじゃない? 何処かレストランでも行く?」  僕は少し考え首を振る。 「部屋で食べたい、何か頼んでいい?」 「いいけど、やっぱり疲れてる?」  司の表情は心配そうな顔に変わる。 「そんなんじゃないよ……大丈夫だから」  僕はメニュー表を見ながら朝ご飯を考える。 司はなんとも言えない顔をして隣に座った。 本当、心配性なんだから。 「これ、頼んでいい?」  僕はホテルお勧めのモーニングセットを 選ぶと司はいいよと言って フロントに電話してくれた。 「司の分も頼んで、一緒に食べたい」  電話の途中で伝えると、慌てた様子で 同じものを二つ頼んだ。 「たまにはゆっくり話でもしようよ」  こんな事もない限りゆっくり話出来ないもんね。 もうすぐデビューして三年。司と出会ってから もうそんなに経つんだとしみじみ。 ここの所、色々ありすぎて迷惑ばかり。  仕事を辞めてもいいよ……そう言われた日から 何も話せていない。初めて会ったあの日も 司は僕を一番に見てくれていたよね。 あの時、もし司に会っていなかったら 今の僕はいないんだよ……。 司は言ったね、大和の人生を変えたのは僕。 でも、それなら僕の人生を 変えてくれたのは司なんだよ。

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