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第2章第54話
料理を目の前にして向かい合わせで座る。
こんな当たり前な光景いつ以来だろう。
「司とこんな風に食事するの久しぶりだね」
誰よりも一番長く一緒に過ごしているけれど、
いつも食事は別々。寧ろ司がゆっくりご飯食べて
いる光景なんて最近見ていない。
「……そうだね。暁、やっぱり不安があるの?」
すぐ僕の話題。嬉しいけど複雑。
「不安がないわけじゃないよこれからの事、
でも司って僕のことばっかりで疲れない?」
司がようやく食べ物を口に運んだと言うのに
僕の言葉で激しく咽た。
「何急に……」
「なんとなく」
漠然とした僕の答えに司はなんとも言えない
顔をした。
「疲れたりしないよ……、
寧ろ暁の事を考えてる自分は嫌いじゃない」
うわ、そう言う事平気で言えちゃうのが凄い。
颯真もそう言うタイプだし、似てるのかな二人って。
今度二人の話も訊きたいな。
「それより大和君とは話しできたの?」
「話してない」
司の言葉に僕は食べる手を止めた。
目の前の顔は何か言いたげだけど、
それ以上訊いて来ないのは司らしい。
「……この仕事が終わったらちゃんと話すよ」
司はそうかと小さく頷いて、
僕も小さく頷いて暫く沈黙が流れた。
「そう言えば神崎さんてどんな人?」
「俺も直接は仕事したことないから
あれだけど、評判はいいよ彼」
確かに今のところ見た目に反して
真面目な印象しかない。
「気になるの?」
「少しは……」
司はそうかと静かに頷いて
食べ終わった口元をナプキンで拭う。
「暁が誰かに興味を持つなんて珍しいね」
「そうかな?」
僕ってそんなに人に興味を示さない?
考えたこともない。
「少なくとも大和君以外はなかったよね」
そうだっけ……。司に言われて考える。
確かに僕から誰かの話とか振った記憶はない。
それは僕が特定の誰かと仕事してこなかったから
じゃないの?そう言いかけてやめた。
それから直ぐに司はスタッフに呼び出されて
話はうやむやになってしまったけど、
司とあって三年も経つのに、僕の人への興味は
殆ど変わっていないんだと思い知らされた。
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