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第2章第57話

 今日から撮影。と言っても 数日は僕一人の撮影。これは 僕の写真集なので当然一人の 写真もある。  でもオフなはずの神崎さんが 見学したいと現場入り。 仕事熱心なのは関心するけど 見られているのは緊張してしまう。  それに昨日からのモヤモヤが 完全に晴れたわけでもない。 「AKIちゃん少し表情硬いね、 もしかして緊張してる?」  カメラマンの一言に僕は 我に返った。いけない今は仕事。  今回の写真集のテーマは光と影。 月と太陽みたいな存在を僕と神崎さんで 表現する。  だから僕の衣装は白が殆ど。 今日の服はまるでウエディングドレス みたいな作りでちょっと大変。 外の撮影でなかったのが救い。 「AKIちゃん柔らかい表情ください」  カメラマンのリクエスト。 僕は息を一つ吐いて集中する。  僕がカメラに向かって表情を作ると パシャパシャとフラッシュ。  「いいね~」  カメラマンも僕もノッて来た。 数十人いるスタッフの存在も 神崎さんの視線も消える。  今は暁ではなくAKI。 女性として求められた表情、 雰囲気、仕草それだけに集中。  「いい感じ」  聞こえるのはカメラマンの声だけ。 一枚の写真を作るのに何百枚と撮影して ようやく使える写真が出来る。  時に納得出来るまで何千枚と言う 膨大な数と時間が必要な事もある。 午前中から始まった撮影は久しぶりに 昼を大きく回って、休憩が取れたのは 三時を過ぎた頃。 「OK休憩しようか」  ようやく貰えたOKに 僕は息を一つ吐いた。  スタジオ内の休憩室に用意された 食事はビュッフェ式。流石にお腹空いた。  僕はストールを羽織って何食べようか 吟味していると背後で声を掛けられた。 「お疲れ様」 「お疲れ様です」  声の主は神崎さん。 僕はペコリと頭を下げた。 「お昼一緒にしていいかな?」  神崎さんはどうやら撮影に付き合ってまだ 食べていない様子。断る訳にもいかなくて 僕は頷いた。    

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