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第2章第59話
食後のティータイムでようやくホッとする。神崎さんが目の前にいるのは少し緊張するけど。お互い会話もなく一息を吐く。早く慣れないないとなこの人には……気づかれない程度に視線を送って直ぐに紅茶に目線を移す。
「AKIちゃん」
突然口を開いて僕は内心ドキッとした。零しかけた紅茶をテーブルに置き返事をする。
「なんですか?」
やけに真剣な眼差しにゴクリと喉がなる。
「AKIちゃんて付き合っている人とか好きな人はいるの?」
「へ?」
突然の質問に変な声が出てしまった。だっていきなり過ぎるでしょ。なんて応えればいいの? いますなんて言えないよ。
「あ、あの」
少し動揺しながら応えかけた時、スタジオ入り口から司が出てきた。
「暁、ここにいたの? ちょっといい?」
タイミングよく司に呼ばれ僕は内心ホッとした。
「神崎さんごめんない。失礼します」
そう言って頭を下げると神崎さんの顔はどこか残念そうにも見えた。僕は構わず司の元へ駆け寄る。
「神崎君と一緒にお昼食べたの?」
廊下を歩きながらの会話。僕は頷いた。
「何話してたの?」
「別に……殆ど仕事の話」
司はそうかと頷きながらスケジュール帳を確認してる。
「本当はさっき付き合っている人はいのか訊かれて困ってたの。助かった」
僕の言葉に司は顔上げ足を止める。
「答えたの?」
僕はブンブンと首を横に振り説明する。司はそうかと言ってホッとした表情を見せた。
「仲良くするのは構わないけどほどほどにね」
言われなくても分かっている。僕はうんと頷いて楽屋に一度引き返した。
鏡の前に座るとメイクが少し崩れている。僕は直しながら司を鏡越しに気にした。
「ところで何の用だったの?」
司はパソコンと睨めっこしながら口を開く。
「この後の撮影少し雰囲気を変えたいと言われた。衣装とメイク変えないとね」
「衣装変わるの? どれ?」
衣装を見ないとメイクが決まらない。僕は立ち上がり衣装を見る。
「これ」
司に言われたのは、今着ているウエディングみたいな白い衣装とは違う大人な黒の衣装。
これじゃメイクは全部やり直した。僕は衣装を見て鏡に座るとメイクを全て落としにかかる。
「カメラマンさんの指示?」
「そう、いろんな写真を撮ってみたいらしい」
僕は分かったと返事をして新しい衣装に映えるようなメイクを施していく。合間スマホに目をやると大和からの連絡はなかった。いけない今は撮影に集中。撮影にはメイクさんも付いているけど、基本的なメイクは全て自分でやる。ウイッグも変えた方がいいかな? そんな事を思いながら大和の存在を頭の隅に追いやった。
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