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第2章第62話

撮影が終わったのは夜八時を回った頃。ようやく解放された僕はスタッフ皆に挨拶をして楽屋に戻った。司もスタッフと話をしていたので先に楽屋で帰宅準備をする。  鏡前一日のメイクを落としてスッキリ。お肌のお手入れはお風呂に入ってからにしよう。ホテルまでしか帰らないので服装は軽装。今日もお疲れ様自分。 「暁お待たせ、帰る準備出来てる?」 「司お疲れ様、出来てるよ」  僕が楽屋に戻って三十分ほどで顔を出し何気ない会話。僕はソファで寛いでいる。 「じゃあ、ホテルに戻ろうか。何処か買い物とか大丈夫?」 「大丈夫、部屋でルームサービス取るから」  司は分かったと言って二人で楽屋を後にすると司の車に乗ってホテルに戻った。 「一人で大丈夫?明日も撮影だから早めに休んで」  撮影所からさほど遠くないホテルの一室。僕は大丈夫と答えた。 「じゃあ俺は部屋に戻るよ、何かあったら直ぐ呼んで」 「はい」  そう言って司は自室に戻った。僕はとりあえずお風呂に入ることにした。ここのホテルちゃんと湯船入れられるだよね。海外では珍しい。お湯を溜めながら僕は鼻歌なんか歌ったりして。そうこうしている内にお風呂は沸き僕は入浴を済ませる。  湯船に浸かりながらふと大和を思い出す。昼間素っ気なかったよね。ちゃんと連絡しなきゃなのに。 「電話してみようかな」  ボソッと呟いた後、湯船で顔を洗う。電話して何話そう……。僕は一時間ぐらいお風呂に浸かりながら考えてようやく上がった。  部屋着に着替え顔のお手入れすると時間はもう九時半を回る。ルームサービス頼まなきゃ!僕はメニューを決めてフロントに電話をかけた。 「これでよしと」  誰もいない部屋で独り言。なんか寂しいな……。ルームサービスが来るまで僕はベッドに転がった。スマホを眺めて大和を思う。今何をしているんだろう……。  明日からは神崎さんと撮影。少し緊張している。大和の声が聴きたいな。それでも直ぐに掛けられず僕は目を閉じた。暫くしてルームサービスも届き、僕はお礼を言うと遅めの夕飯をとった。  なんだかんだ後は寝るだけとなったのは十時を回っていた。時差は一時間。まだ起きてるかな?僕は大和の番号を呼び出し、思い切ってかけてみた。  プルルルル――  何度か呼び出したけど電話に出る様子がない。僕は溜息を吐きながら電話をベッドへ投げた。 「忙しいのかな」  大和を思い浮かべるとその手に触れて欲しくなる。僕は自分の身体を自分で抱きしめた。 「寂しいってこう言う事なのかな」  目を閉じて思い出す。大和の温もり肌の感触。手の大きさ。全てが愛おしい。身体が大和を求めている。どうしよう……身体が疼く。  僕はその日初めて自分で自慰行為をした。吐き出した後は虚しくて、お風呂に入ったばかりなのにシャワーを頭から被った。大和はこんな事しているのだろうか……。 「会いたいよ……」  シャワーを頭から被りながらボソッと一言。やけに響く。明日の撮影の前にこんなんで本当にまともに仕事が出来るのだろうか……。僕はシャワーから出るとベッドへと潜り込んだ。スマホを眺めても着信はない。 「もう寝よう」  僕は諦めて目を閉じた。その日大和からの連絡は結局来なかった。すれ違いの日々。一体いつまで続くんだろうか……。そんな事を思いながらも身体は疲れていたのか僕はいつの間にか眠ってしまった。

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