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第2章第63話
翌日目を覚ますと外は雨。スコールかな? なんだか気分は憂鬱。
「はぁ……」
珍しく仕事気分にはなってくれない。雨だし、中止になってくれないかな。こんな事考えちゃいけないんだけど。
コンコン。ドアのノックオンに僕は上着を羽織り扉を開けた。
「おはよう暁」
「おはよう司」
浮かない僕の表情に司は気づいたのかちょっといい? と部屋に入って来た。
「今日外の撮影だったでしょ? でもこの雨だし今日は中止だって」
「中止?」
僕は内心喜んだ。こんな気分じゃ仕事にならないし。でもスタジオ撮影って事も。
「今日はスタジオ撮影もなし、だから一日ゆっくり休んで」
「本当に?」
司は本当だよって頭をなでてくれた。喜んじゃいけないんだろうけど内心僕はホッとした。
「暁、顔色あまり良くないよ」
僕は顔を触って確かめる。そんなに顔色悪い? 鏡ないんだよな。
「とにかく今日は休んで、分かった?」
僕はうんと頷くと司は心配そうに僕の額に手を宛ててくる。
「熱はないね……これから俺はスタッフと打ち合わせなんだけど一人で大丈夫?」
「大丈夫、横になっているから心配しないで」
ならいいけど……そう言って司はまだ心配そうな顔をする。僕は弱いなこんなじゃ駄目なのに。
「じゃあ行くけどちゃんと休んでるんだよ」
僕はしっかり頷いて司と別れた。そのままベッドへダイブ。投げていたスマホを確認するも大和からの連絡はない。やっぱり忙しいのかな。
思わぬオフに僕はボーっとする。雨だし外に出るのも億劫。大和の声が聴きたい。番号を呼び出しては消すの繰り返し。
「大和……」
優しい眼差し。大きな手……思い描いては消していく。このまま会えなくなるんじゃないかと錯覚さえしてくる。いつもなら飛んでいける距離。でも今はそれが出来ない。僕は自らの身体を抱きしめ丸まった。
いつの間にか寝落ちをしていた事に気づいたのはお昼になってから。目を覚ませばその時間。何処かへお昼を食べに行く元気もなく、僕はルームサービスを頼んだ。
暫くして料理は運ばれてきて僕は何気なくテレビを付ける。日本語ではない放送。それでも英語圏内なので僕は困らなかった。
こんなに日本に帰りたいって思うの初めてかも……。大和と会うまではこっちが楽しくて仕方なかったのに。
温かな昼食を食べながらこれからどうしようかと考えていると、突然の着信。僕は慌ててベッドにあるスマホを手に取り名前も確認せず出る
「もしもし……」
「暁?」
その声は紛れもなく大和の声で、僕の頬には涙が伝う。
「泣いているの?」
僕は見えもしないのに首を横に振りううんと返事を返した。素直に泣いているとは言えない。
「ごめんね、昨日寝ちゃって気づかなかったんだ」
「大丈夫」
何が大丈夫だよ。自分でそう思うけど電話をくれただけで僕は良かった。
「撮影じゃないの?」
僕は事情を説明すると大和はそうかと頷いた。どうやら大和も今日は休みのようで僕は嬉しくなった。何を話そう。話したい事は沢山あるのにいざとなると見つからない。
大和の穏やかな声を聴くのはどのくらい振りだろうか。さっきまでしょげていた自分が嘘のように声が弾む。僕は食べるのも忘れ大和の声に聞き言った。
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