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第2章第64話
大和の声もどこか弾んでいる。あの日以来まともに声を聴いてなかった僕は少し目が潤んだ。
「大和……大和に触れたい」
考えなんてなかった。気が付けばそう口にしていた。触って欲しい。抱きしめて欲しい。今すぐ。
そんな衝動が抑えられなかった。
「暁……」
チュッと電話越しに音がした。キスをくれたんだと思うと身体が疼く。
「大和……もっと」
電話越しに強請るなんてはしたない。でも欲しい。僕はベッドに転がり込んで大和の反応を待つ。
「暁どうしたの?欲求不満?」
単刀直入に訊かれると恥ずかしいけど、僕は否定しなかった。大和が欲しいのは事実だから。
「……暁」
大和は何度もキスをくれる。ちょっと荒くなった呼吸が電話越しに伝わると僕の呼吸も乱れ、キスだけでは足らなくなった。僕は下半身に手を伸ばすとズボンを下ろして自ら触れた。
「大和……ぁあぁ」
大和は暫く黙って僕の様子を伺う。僕は構わず自らペニスに指を絡めた。
「はぁ……っぁあ、ぁぁあ」
「暁……もっと訊かせて 」
僕は大和の指を思い出しながら、大和に触れられていると思い込んでペニスを扱く。
「あっ、大和……ぁあぁぁ、」
「暁、暁」
名前を呼ばれるだけで僕の身体は敏感に反応する。吐息交じりで、ほらもっとなんて言われたら僕は我慢できなくなる。
「あん、やま……と…もう、ぁぁあ、あんぁ、はあ」
グチュグチュと濡れた音が部屋に響く。限界は近くて僕の手は自然と速まる。
「暁、イっていいよ」
僕はお許しが出て、扱く手に力が籠る。大和の荒い息遣いを感じながら僕は絶頂を迎える。
「ひぁ、ぁぁあ、んはぁあ」
ビクンと身体が跳ね僕は自らの手に白濁を吐き出した。時間にして数分。呆気ない終わりだった。今すぐ大和に抱きしめて欲しい。今すぐ大和が欲しい。そんな感情に支配されていた。
「はぁ……はぁ」
大和は何度もキスをくれる。でも手は届かない。
「暁、愛している」
僕も大和が好き、愛している。だから会いたい。今すぐ日本に帰ってめちゃくちゃに抱いて欲しい。でも
それは言葉に出来なかった。言ったら困らせるだけだもの。
「大和会いたい」
その一言だけだった。伝えたい思いは沢山あるのにいざとなると言葉に出来ないもどかしさ。
「俺も会いたい……暁がこんなことしてくれるなんて嬉しいよ」
僕は大和の声を訊きながら汚れた手をティッシュで拭き、ペニスも綺麗に拭き取ると、ズボンを履き、
スマホを持って洗面台へ移動した。
「暁、寂しい?」
僕はうんと頷いて手を洗う。昨日も思ったけど自慰は虚しい。大和の声が遠く聞こえる。
「俺も寂しいよ 」
大和の言葉……。僕にはぐさりと刺さる。この撮影が大和との物だったら違ったのに。考えてはいけない。
そんなの神崎さんに失礼だと分かっていても思ってしまう。僕は駄目な子だ。私情挟むなんて……。
「暁?」
「ごめんね、大和」
僕はただ謝る事しか出来ず、はしたない行為も全部含めて僕は反省した。何を話そう。そう思っている時に大和がごめん逢坂から電話。そう言われたので僕は分かったと言って電話を切った。僕何しているんだろう。
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