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第2章第66話

 翌日天候は晴れ、予定通り撮影が始まる。僕はスタッフ全員に挨拶した後、女の子になる為に控室に戻った。準備ができ次第浜辺に移動して神崎さんとの撮影。今日は撮影の為にビーチを貸し切りにしている。なんだか緊張するな。 「暁、準備出来たらビーチに来てね、俺は先に行っているから」 「はい」  僕は衣装のチェックをして顔を作り始める。日焼けはしたくないのでケアーはちゃんとしないと。男の子暁から徐々にモデルAKIに変貌していく。メイクは魔法。慣れない頃は一苦労だったのに。三十分ほどでメイクを終了すると、衣装に着替え最後にウイッグを付ける。仕草を加えて鏡で再度チェックをすると僕は完璧にAKIになっていた。 「これでよし」  とりあえずストールを羽織り帽子を被ってビーチに向かう。昨日のモヤモヤが嘘のように僕は集中していた。ビーチに着くとスタッフが準備に追われていた。 「AKIさん来ました」  スタッフの一人が声を掛けると一斉に視線が集まる。 「今日は宜しくお願い致します」  僕はペコリと頭を下げ挨拶をするとスタッフは皆宜しくねと声を掛けてくれた。 「AKIちゃん」  声の主は神崎さん、司はまだスタッフと打ち合わせ中みたいだった。 「おはようございます神崎さん」 「おはよう、今日も綺麗だね」  神崎さの言葉に少しだけ戸惑う僕はとりあえず笑顔で応えた。 「今日はAKIちゃんとの撮影だから朝から緊張しちゃって」 「実は僕も少し緊張しています」  僕達は顔を見合わせお互いに笑い合った。 「出来るだけAKIちゃんがやりやすいように頑張るから宜しくね」 「こちらこそ宜しくお願いします」  僕達はスタッフの準備が終わるまで談笑しつつその時を待った。意外と神崎さんは話しやすくてちょっと驚いた。最初に出会った頃は見た目が派手で戸惑ったけど、今は黒髪で落ち着いた感じ。 「髪の色、撮影の為に変えたんですか?」 「え? あ、まあそうかな」  前に着けていたピアスも外して最初の頃のイメージはどこにも無い。 「AKIちゃん神崎君そろそろいいかな」 「はい」  お互いにカメラマンに返事をすると、僕は話し終えた司にストールと帽子を預けカメラマンの元へ向かった。 「二人とも今日は宜しくね」  それぞれカメラマンと握手をするとニッコリ挨拶をした。今日はどんな指示が飛ぶのだろう。 「とりあえず、恋人って設定だからそれらしく自由に動いてみて」  お任せって事か。僕は神崎さんに視線を送る。神崎さんもまた僕を見て言葉を交わさずともお互い頷いて カメラの前に立った。  恋人を演じればいい。僕は軽く息を吐いて神崎さんの手を取った。神崎さんもまた僕の手を握り返す。ここは浜辺。カメラも固定じゃない。なら恋人同士がしそうな事をすればいい。僕等は言葉を交わさなくてもそれが通じているのかお互い役になりきった。 「いいね~そのまま続けて」  カメラマンはご機嫌。僕等は手を繋いで歩いてみたり、水を掛けあったり、抱きついてみたりと色々試しながら撮影は進んだ。 「いい感じ。少し休もうか」  何百と言う枚数を撮り終えた後、ようやくカメラマンのOKをもらって休憩に入った。濡れた部分は司から渡されたタオルで拭きつつ、僕はカメラマンに話しかけた。 「撮った写真見せてもらっていいですか?」 「いいよ」  僕はいつも撮影直後の写真をチェックする癖がある。どうせ撮るなら良い物がいいから。僕は出来るだけ自分の目で確認して気に入らなければ撮り直してもらう事も多々ある。

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