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第2章第67話

 写真を見せてもらえば、意外とちゃんと撮れている。もう少しぎこちないと思ったんだけど、自分が思っている以上に集中は出来ているようだ。何百枚とある写真を一枚一枚確認し終わるとどれも良く撮れていたので少し安心した。 「有難うございました」 「いやいやAKIちゃんは真面目だね。少し休憩してきなよ」  僕はカメラマンに促され司の元へ戻った。 「大丈夫みたいだね」  司はそう言って飲み物とストールを僕に渡した。僕は受け取ると用意された椅子に座り飲み物を口にする。 「違和感なく撮れてたよ」  何気ない会話。神崎さんは少し離れた場所でマネージャーと話をしている。束の間の休息。僕はストールを羽織り海を眺めた。 「暁、明日はスタジオ撮影だからね」 「はい」  明日はもっと神崎さんと密着した撮影になる。大和以外の人と肌を合わせるのはどことなく緊張してしまう。少なからず今日もそういう場面は何度かあるのだけれど。 「大丈夫?」  司は少し心配そうな顔でこちらを伺う。僕はニッコリ微笑んで大丈夫と答えた。十分程の休憩を挟んで撮影が再開。僕はとにかく集中した。  今は神崎さんが僕の恋人。普段大和にしか見せない表情を惜しみなく出した。長丁場の撮影は既に日が傾き始めている。サンセットを背に僕等は恋人を演じる。最後の一枚が撮れた頃には夕日はもう殆ど沈んでいた。 「OK今日の撮影はここまでお疲れ様」  カメラマンの一言に僕はようやく解放される。隣で神崎さんも僅かに息を吐いた。 「お疲れさまでした」 「AKIちゃんもお疲れ様。俺ちゃんとリード出来てたかな?」  神崎さんの言葉に僕はニッコリ微笑んで返事をする。目の前の顔はホッとした表情を見せた。 「明日も宜しくお願い致します」 「こちらこそ」  僕等はその場で解散すると、僕はカメラマンの元へ足を運んだ。さっきと同じように写真チェックをさせてもらう為だ。 「AKIちゃんは熱心だね、本当関心するよ」 「気になるだけです」  僕はカメラマンと談笑しながら写真を全てチェックし、スタッフが片付け終わる頃にようやく見終わった。 「スタッフの皆さんもお疲れ様です。明日も宜しくお願い致します」  僕がその場にいるスタッフに挨拶をすると、皆がこちらを向いて挨拶を返してくれた。 「暁、お疲れ」 「司もお疲れ様」  僕は少し肌寒くなった身体にストールを羽織り飲み物を口に含んで、司と共に控室に戻った。 「疲れたろう」 「少しね」  司と何気ない会話をしつつ僕はメイクを落としていく。蒸れたウイッグも外し暁に戻るとスッキリした。 「今日の出来は何点?」  僕は司に訊いてみる。司は少し考えてこう答えた。 「満点と言いたいとこだけど、ちょっと緊張してた?」 「まあね」  満点の出来ではないのかと僕は少ししょんぼり。でも司は良く出来たと褒めてくれた。着替えも済ませ控室を後にすると、司と別れ僕はホテルの自室に戻った。 「疲れた」  僕は部屋に入るなり独り言を言ってベッドへダイブ。ずっと一人で撮影してきた僕にとって誰かとの撮影は気も遣うしいつも以上に疲労感に襲われていた。

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