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第2章第72話

 司と入った店はコース料理メインのフレンチレストラン。僕と司はそれぞれコース料理を頼むと僕はソフトドリンク、司はワインで乾杯をする。 「お疲れ」  お互い一口ずつ口に運ぶとグラスを置いて会話が自然と始まる。仕事の話から始まりある程度会話が弾むとコース料理が運ばれて来た。 「美味しそう」 「食べようか」  とりあえず会話を中断して僕等はコースを堪能する。メインが来た頃、司は手を止め口火を切る。 「暁、神崎君の事だけど……」  僕は一口肉を口に運んで手を止める。 「何?」  司は水を口にして真剣な眼差しで僕を見るとこう続けた。 「神崎君の事どう思っている?」  どう思っているっていきなりの質問に僕は頭を巡らせた。 「良い人だと思うよ、仕事もやりやすいし、真面目な人だよね」  僕の答えに司はワインを飲むとこちらに視線を合わせる。 「人として好きなタイプって事でいい?」  司が意図としている意味が分からない僕は食べかけのステーキに手をつけながら頷く。 「司や颯真みたいな存在かな?」  何気なく口にした言葉。深い意味はなかった。でも司の顔が少し曇った顔に変わる。僕何か変な事言ったろうか? 「暁がこの短期間でそう感じるのは珍しいね」  そうかな?僕は司の言葉の意味が分からない。何を言いたいのだろうか。 「どうして?」  疑問に思った僕は直接司に訊いてみる。 「いや……大和君とは連絡はとってる?」  司は言葉を濁して話題を変えた。なんだろうこの感じ。僕は少しモヤモヤしながら司の問いに答える。 「とってない」  ステーキの最後の一切れを口に運ぶと僕は返事をした。司も肉を口に運んで飲み込むとそうかと一言。 「司?」  僕はどうしても引っかかるので訊いてみる。司は何かを考えるように間が開く。暫しの沈黙。僕は痺れを切らして口火を切った。 「何が言いたいの?」  僕の言葉に司はようやくこちらを向いて話し始めた。 「暁の言うように神崎君はしっかりした人だと思う。暁が感じている事も間違ってはいない。ただ、あまり隙を見せるなよ」  隙?どう言う意味だろうか……? 「どういう意味?」 「とにかくあまり二人きりになるな」  お互いメインデッシュを食べ終わると暫くしてデザートが運ばれてくる。僕は司の意図とする意味が良く分からなかったけど、あまりに真剣な眼差しを向けてくるので僕は分かったと返事をした。  結局神崎さんの話はそこで終わり、話は別の方向へ向かった。なんかスッキリしないと思いながらもデザートを食べ終え食事は終了。支払いは司が終わらせ僕達はホテルへと戻った。  司は僕に何を言いたかったのだろうか?彼がはっきり物を言わないのは今までなかったのに。自分が鈍感なだけ?僕が司の言葉を理解するのは撮影最終日、打ち上げの時間だった。それが後になって大問題になるなんてこの時の僕は知る由もない。

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