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第2章第73話

 撮影最終日、撮影は順調に進みラスト一枚が撮り終ったのは夕方四時。これで一カ月の撮影は全て終了。スタッフから拍手が送られ、カメラマンから花束を貰った。 「二人ともお疲れ、良い作品が出来そうだよ」  カメラマンの言葉に僕は笑顔で応え、神崎さんとお互いを称え合い握手を交わした。 「一カ月有難うございます。僕にとっては良い経験になりました」  僕がそう言葉にすると神崎さんはニコッと微笑んでこう言った。 「俺もだよ、AKIちゃんとの撮影は最高だった」  お互いがっちり握手を交わし、スタッフに挨拶をして楽屋に戻る。衣装だけ着替えメイクとウイックはそのまま。いつも打ち上げの時はAKIのままで参加するのが決まり。女の子用の服を仕事以外で着るのは久々。 「暁、お疲れ」 「司、お疲れ様」  僕は貰った花束を置いて鏡の前に座りメイクを軽く直す。司はソファに座りふうーっと小さく溜息。 「打ち上げ何時から?」 「六時からだよ」  僕は時計を見て時間を確認する。後、一時間半か。大和へのお土産買える時間あるかな? 明日の方が良いかな?そんな事を考えながら司に確認してみる。 「打ち上げ場所は何処?」 「ここからそう遠くない日本食のお店だよ」  日本食か。こっちに来てから全く食べてない和食。僕はメイクを終えると司の隣に座った。 「打ち上げ前にホテル戻れる?」 「戻るか?」 「うん」  僕は帰り支度をすると、一度ホテルへと戻った。部屋に戻ると鏡でコーディネートを確認する。うーん別の衣装の方がいいかな?僕は持ち合わせの衣装を部屋に広げどれにするか悩む。 「こっちの方が良いかな?」  いくつかチョイスして着替えてみると落ち着いた感じに纏まった。 「よしこれでいいや」    支度をして一息つく。部屋に常備されたコーヒーを淹れ一口飲むとホッとした。 「大和に連絡してみようかな」  スマホを取り出し大和に電話すると応答はなく留守番電話に切り替わった。僕は明後日帰る事を留守電に残してコーヒーを飲み干す。部屋で一時間程寛いで、司が部屋にやって来た。 「そろそろ向かうぞ」 「うん」  僕は必要最低限の荷物を手に司と一緒に和食レストランへと向かった。お店に着くと既に数名のスタッフが集まっている。 「AKIちゃんお疲れ様」  数名のスタッフに声を掛けられ僕はお疲れ様ですと声を掛けた。それから三十分程で続々と集まり、最後に神崎さんがやって来た。皆はアルコールを注文、食べ物も適当に頼んで打ち上げが始まった。店は貸し切り。オフモードのスタッフ達はアルコールも手伝ってテンションはどんどん上がる。僕は一人ソフトドリンクを飲んでまったり。司も珍しくアルコールを口にしていた。僕は次々くる日本食を味わいながらニッコリ。一時間もすれば皆のテンションはMAXまで上がっていた。 「司、僕少し夜風にあたって来るね」  司に一言伝えて僕はテラスに出る。店は海沿いにある為、潮風が気持ちいい。夜の海は静か。僅かに波の音が聞こえる。   「大和どうしてるかな?」    思わず口にした直後、背後から声がする。 「AKIちゃん」  僕は後ろを振り向いて声の主を見つめると、そこには神崎さんが立っていた。聞こえたかな?僕は誤魔化すようにニコッとすると神崎さんもニッコリ微笑む。良かった。聞こえなかったみたいだ。 「打ち上げ愉しくない?」 「いえそう言う訳じゃなくて……」  僕がそう言って視線を暗い海に移すと、神崎さんは僕の傍らに立ち真剣な眼差しで僕を見た。

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