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第2章第33話
暁side
僕がふと目を覚ましたのは
夜中の二時を回った頃。
目の前にはぐっすり眠る大和の顔。
「……ぁ」
僕は思わず声を上げ、慌てて口を塞いだ。
いけない……起こしてしまう。
僕は今まで以上にかっこよくなっている
大和の顔を暫く眺めた後、
ベッドから起き上がると、
既に数時間経過しているにも
関わらず、足が笑って尻もちをついた。
「う……そ」
僕は小さく呟いて這うようにキッチンに向かった。
異常な喉の渇きを潤すように必死に
冷蔵庫に手を伸ばすと、僕はごくごくと
勢いよく水を飲み干す。
「はぁ……」
生き返った。だけど僕はふと我に返る。
オーディション結果は数日に出る。
もし神崎さんなら……大和は……。
それだけじゃない。
大和が正式にデビューすれば……。
真っ暗なキッチンの床に座りこんで
僕の頭に浮かぶのは、抱かれた幸せより
不安な未来。
気が付けばポタポタと床に零れる涙。
こんな気持ちは駄目!
そう思っても涙は止まらず、
僕は声を出さないようにするだけで
精一杯だった。
嫉妬?独占欲?それだけじゃない。
僕は大和に話していない事がある。
とてもとても大事な話。
僕はまだ大和の感触が残る身体を
丸め、自分で包み込むように不安を
掻き消すけど、これから待ち受ける
現実に一時間ほど泣いて、ようやく
大和の腕に戻った。
明日、目が腫れてるって言われるかな?
大和にどんな顔をする?
そう考えながらも、身体は疲れきり、
僕は付けたウイッグを外す
余裕すらなくそのまま瞼を閉じた。
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