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第1章第3話

それから約1ヶ月が 経ちあの出会いも 男と言うだけで 忘れかけていた日、 俺は退屈な授業をサボり 本屋でいつものように 雑誌を漁っていた。 「うん……今日も綺麗」 ついつい独り言。ルンルンで 会計を済ませると本屋を出た所で いきなり声をかけられた。 「君、モデルに興味あるの?」 声の方を振り向くとなにやら スーツでビシッと決めた 30前後の紳士的な人。 だが────、 「それともAKIに興味あるのかな?」 AKIと言う名に俺は強く反応する。 なにやら馴れ馴れしい……。 ジロと男性を見る目がきつくなる。 「はは、悪い悪い……、 怪しいものじゃないよ」 笑ってそう言うが 男にいきなり声をかける あんたは十分怪しい。 「いきなりごめんな、 こう言う者です」 手にした鞄を脚元に 置き名刺を渡された。 名刺には広瀬司(ひろせつかさ)と 記され知らない会社名が書いてある。 「知らない?モデル雑誌買っていたから てっきり分かるかと……」 てかこいつ見てたのか? 段々気色悪くなってきた。 「なるほどね、やっぱりAKIか」 ムッ!なんかムカつくこいつ。 「さっきからAKI、 AKIってなんなんですか?」 不機嫌な声で怒鳴ってしまった。 だってこいつがあまりに 親しげに名を呼ぶから。 しかし、彼…… 広瀬は笑いながらこう言った。 「いや、それ……買った 雑誌全部AKIが載ってるからさ」 だからなんなんだよ。 背後から人の趣味を 覗き見する悪趣味な奴か? 「話が読めないか…… 俺はモデル事務所の マネージャーやってる者だけど、 君が熱心に雑誌を見ていたから興味が あるのかと声を掛けたんだ」 「へ……?」 モデル事務所のマネージャー?何? いきなりの事に頭がついていかない。 「君があまりに格好いいからついね」 格好いい?なんだか話が呑み込めない。 キョトンとした表情を浮かべていると 「言わばスカウトなんだけど」 スカウト?俺を?モデル……、 「え……俺が?」 やっと理解し始めた 俺をニッコリ微笑んで 「そう……君が」 ちょっと待て、俺がモデル? いや考えたことないでしょ! てかいきなり来るもんなのか? 百面相のようにクルクル変わる 俺の表情に思わず、 広瀬と名乗る人は笑いを堪えていた。 「わ、笑わないでください! いきなりで頭混乱してるんですから」 「はは、ごめんごめん、少し話せる?」 え……どうしようかな…… モデルって俺できねーし。 迷っている俺に 見透かしたようにこう言った。 「AKIは俺の担当なんだよね……」 「えっ……」 迷っていた俺の目の色が変わる。 「クス…やっぱりAKIに興味があるんだね」 「…………」 担当……って事はこの事務所に入れば AKIと会える? 一生会えないと思っていた チャンスが向こうからやって来た。 「話訊かせてください」 ちょっとさっきまで怪しいと 警戒していた俺はもういなかった。 とにかく話を訊きたい。 「じゃあ、あそこのカフェで」 脚元の鞄を手にし カフェへと歩き出す。 俺は内心ドキドキで 彼の後をついて行った。 まさか…とんでもない 真実を訊かされるとは知らずに。

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