14 / 214
第1章第14話
AKIと部屋に戻ると
広瀬さんがこちらを向いた。
「大丈夫?具合悪い?」
「大丈夫です」
俺は2人が座る前に
腰を下ろしゆっくり一呼吸。
「あの……スカウトの件ですけど」
まだ僅かに声が上擦るか…?
でももう決めたんだ。
俺はAKIの側にいたい。
どんな形でも────。
「気持ち決まったの?」
「……はい、やらせてください」
広瀬さんはきっちり
締めていたネクタイを緩め
「そう良かった、じゃあ
そう言う方向で話を進めるね」
そう言うとニッコリ微笑んだ。
「はい、お願い致します」
俺がその場で立ち上がり頭を下げると
黙って広瀬さんの隣に座っていた
AKIも立ち上がり俺の前に
細い手を差し出した。
「………?」
「宜しくね?」
ニッコリ微笑みかけられ
俺の心臓はドクンと高鳴る。
少し躊躇いがちに手に触れた。
温かい……。
軽く握手し俺から離れていく。
もっと触れたい────もっと────。
「九条君」
「あ、はい」
余韻に浸りたいが今は駄目だ。
「一つだけ九条君は未成年だから
契約には親の同意が
必要なんだ話せる?」
同意か……。いや説得するしかない。
なにがなんでも。
「はい……日本にはいないので
電話して話してみます」
「そう分かった、
あ、AKIお前打ち合わせ」
「いけない忘れてた」
慌てた様子で立ち上がると
「また会えるの楽しみにしてます」
振り向きざまに満面の
笑みを浮かべそう言った。
ドクンドクン────
あっ……まただ。
やっぱり……俺は……君が好き。
ともだちにシェアしよう!