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第1章第15話
その日は早々に帰宅し
ネット回線でアメリカに繋ぐ。
「久しぶりだなどうした?」
久々に見た父の顔は
少し窶 つれただろうか?
向こうは時差があるから夜中の筈、
「今平気?」
「大丈夫だどうした?」
こんな風に何かを
お願いするのは多分初めてだ……。
「あのさ俺……仕事したいんだよね」
画面に映る父は突然の俺の告白に
口にしたコーヒーを思わず吐き出した。
無理もない。遊び回る事はあっても
自分から仕事なんて
今まで一度も言った事がない。
父は噎せながら口元を拭き
「バイトか?」
俺は首を振り
「違うモデル」
父は飲みかけたコーヒーを離し
厳しい表情に変わった。
黙ったまま答えがない。
それでも俺は続ける。
「好きな人が出来た、
本気なんだ……俺、
あの子の側にいたい」
暫しの沈黙の後父親は額を抑え
深い溜息をついた。
「たく、久しぶりに
連絡して来たと思えば
仕事はしたいとか
好きな人が出来たとか…………」
「いいだろ?俺決めたんだ」
父は少々呆れたような溜息をつく。
「甘くないぞ?今までみたいに
飽きたから辞めるなんて通用しない、
仕事する以上は責任持て」
厳しい口調、目は笑ってない。
「分かってる……迷惑はかけない」
多分今俺の人生で一番
まともな顔をしてるだろう。
「はぁ……たく……分かった、好きにしろ」
半ば諦めた様子。言い出したら
訊かないのは父譲り。
「有り難う……父さん」
きっとその言葉は
言う機会はないと思ってた。
礼なんて……照れくさい。
だけど────今は心から感謝してる。
別れ際、父が口にした言葉は
「お前変わったな」
そう優しく微笑んだ。
詳しい事はメールするとネット
を切ってベッドに滑り込む。
まだ残ってるAKIの感触。
俺はその手を自分の下半身に伸ばした。
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