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第2章36話おまけSS颯真×司
司side
目が覚めたのは昼近くになってから。
目覚ましをかけずとも
仕事上朝早く目が覚めてしまう
質なので我ながら驚いた。
俺はベッドから下りリビングへ行くと
冷たい空気がベランダから
流れ込みカーテンが揺れている。
「起きたか」
肌寒い外に出るのを躊躇い顔だけを
外に向けると颯真は煙草の煙を
吐き出しながらこちらを向いた。
「起こしてくれれば良かったに」
「馬鹿、あんな気持ちよさげに寝てたら
起こせるか……それに久しぶりの休みぐらい
ゆっくりしろ」
本当俺には甘い。そう思いながらも
心の中でクスリと笑った。
でもこの遠くを見つめる顔、
なんか考え事か。
俺は寒さの中、颯真の横を陣取る。
「何考えてるわけ?」
颯真は煙草を消しこちらを向く。
「俺が考える事なんてお前か暁だけだろう?」
ははは、大和君の事も心配してくれよ。
「なら暁か……」
心配……確かに俺もしている。
「オーディションの事? それとも……」
「この先全部だよ」
だろうね……俺もそうだよと
小さく返事をした。
暁が恋をして、それに気づいた瞬間から
この先が見えた。恐らく
本人が一番分かっている。
暁は俺には何も言わないけど。
颯真は全て知っている。
これから二人に起こる試練も、
俺と暁の間に交わされた約束も。
暁がいっそうどうしたらいいかと
泣きついてくれる子なら
楽だったかもしれない。
でも暁は……。
「後悔してるか?」
何を? そんな言葉を
投げかける関係ではない。
「していると言ったら楽になる?」
颯真は暫し俯きまた新たな煙草に火をつけた。
「……」
黙る俺に、大きな手は俺の頭を撫でる。
「お前のせいじゃない。俺も
誰も予測なんて出来なかった。
だから……」
分かっている。でも、
本当に颯真はズルい。
いつもは俺様な癖に
誰より優しい……。
思わずホロリと零れ落ちた涙に
気付いた瞬間、煙草臭い大きな
胸に抱きしめられ俺は
久しぶりに恋人の腕の中で泣いた。
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