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第1章第34話
「!!」
え………………?
何この展開…………。
自分が置かれてる状況が
あまりにも突然過ぎて頭が真っ白……。
しかし────、
暗闇の中、柑橘系の香りが
俺の鼻をダイレクトに刺激し
目線を落とせば暁が俺の胸元に抱きつき
必死に俺にしがみついている。
ちょ……ちょっと待って?
なんでこうなる?
そもそもなんでこうなったのか……?
遡る事1時間半程前、
少々強引なくらいに
暁が俺の手を握ったまま街中に移動し
「ねぇ、映画観たい」
その一言で俺は言われるがまま
暁と共に映画館へやって来た。
暁と一緒なら俺は何でも良かったし
当然その流れに乗ったのだが
「ねぇ、これにしよ?」
暁が選んだのはラブロマンスでも
話題の映画でもなく何故かホラー。
え……何故ホラー?
変わった趣味だねと
突っ込む余裕などない俺。
握られていた手を気にしながら、
「暁がいいなら俺はなんでも……」
と、気の利いた台詞もなく
チケットを購入し館内へ……。
わざわざホラーを選ぶくらいなら
余程好きなんだろう……と、甘い考えで
一番後ろの席に並んで座る。
時間は調べたわけでもないのに
ちょうどの時間。席に座れば直ぐに暗転し
スクリーンに映像が流れ始めた。
ここまでは良かった。
暁も平気そうに観ていたし
俺は暁が隣にいて
かなり緊張もしていたから
始まる前に買ったドリンクを飲みながら
スクリーンに視線を合わせていた。
そう、ここまではごく普通の
展開だ。好きな子が隣にいて
ドキドキして内容なんか頭に入らない。
その程度だった。
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