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第1章第35話
だが、物語が中盤に差し掛かると、
館内はきゃ~きゃ~と悲鳴を上げる
女子が数人出始めた頃、
大人しく観ていた筈の暁が
俺の胸に飛び込んできて
わなわな震えている。
「え…………」
思わず手にしていた
ドリンクを落としかけ
慌てて指定の場所に置く。
この展開って────?
駄目だ頭がついて来ない。
ホラーだから
当然心臓が飛び出そうな
展開はあるのだが
俺をそうさせたのは
恐怖を描く映像ではなく
隣にいた暁だった。
「あ、暁?」
この状況に声が上擦る。
と、とにかく離さないと
そう思ってしがみついてる
細い腕を優しく掴むと
「や…………」
え……そう言って俺から離れるどころか
背もたれの隙間に腕を回し
ギュッ~と更に強く密着してきた。
ヤバイ……俺の心臓がバクバク音立て
身体が熱を放つ。どうしよう……。
しかしこうなると身動きは取れず
完全に思考は停止し、
ただただ映画が終わるのを
待つしかなく……。
エンドロールが流れるまで
俺は固まったまま何も出来ず
暁から漂う香りだけが
俺の意識を繋ぎ止めていた。
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