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第1章第43話
あれ?応答がない……。
もう一度ノックしてみるが
やはり返事はない。いないのかな……?
「暁?入るよ?」
そう言って扉を開けるとやけに静か。
扉を閉め部屋に視線を向ける。
すると、暁はソファに横になり
スヤスヤ寝息を立てていた。
「え……?寝てる……」
そーっとソファに近寄ると
スースーと気持ちよさげ。
そう言えば朝まで仕事だったと
広瀬さんが言ってたけ。
「どうしよう……てかなにも掛けずに
寝てたら風邪引くだろうに」
ふと寝顔に視線を向けると
その綺麗さに目を奪われた。
ドクン────。
「うわ、睫毛長い……」
睫毛、鼻、そして唇……。
俺の視線はそこで止まった。
見るからに柔らかそうなそれは
つい触れてみたくなる。
ドクン────、
俺はその誘惑に負け
ゆっくりと顔を近づける。
もう少し、あと少し……
あと僅かで触れそうな唇。
が、その時────
「ん……」
数ミリのとこで暁の大きな瞳が開いた。
「……!」
俺は慌てて立ち上がり後ろを向く。
や、ヤバイ。み、見られた。
手で口を覆い飛び出してしまいそうな
心臓を必死に抑え込む。
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