56 / 214

第1章第56話

暁はそうだったと言いながら 身体を離すと舌をペロっと見せ 「紹介するね、こちら逢坂颯真(あいさかそうま)」 「…………」 「颯真、彼が九条大和」 「ふーん君がね」 ボソと逢坂と紹介された男が 面白くなさそうな表情で言った。 なんだこいつ。 「あの颯真はね……」 暁が何かを言いかけたのに 逢坂が暁の口に指を軽く押し当て 「暁言わなくていいよ」 俺に向ける視線とは明らかに違う 優しい眼差し。声も穏やかだ。 「で、も……」 「俺そろそろ仕事戻らない とだしまた今度な」 ちょっと……正体言わないのかよ 逢坂は暁の帽子越しに頭をポンポンすると 俺に近寄り暁に聞こえないくらいの声で 「可愛い暁を泣かせたら俺が許さねーから」 強い口調だがきっぱりそう言って 手をヒラヒラしながら人混みに消えた。 「行っちゃった」 な、なんなんだよ!あれは……! 俺嫌われてる訳?てか初めて会って そりゃないだろ! なんだかすげームカつく男。 俺の最初の印象は最悪だった。

ともだちにシェアしよう!