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第1章第56話
暁はそうだったと言いながら
身体を離すと舌をペロっと見せ
「紹介するね、こちら逢坂颯真 」
「…………」
「颯真、彼が九条大和」
「ふーん君がね」
ボソと逢坂と紹介された男が
面白くなさそうな表情で言った。
なんだこいつ。
「あの颯真はね……」
暁が何かを言いかけたのに
逢坂が暁の口に指を軽く押し当て
「暁言わなくていいよ」
俺に向ける視線とは明らかに違う
優しい眼差し。声も穏やかだ。
「で、も……」
「俺そろそろ仕事戻らない
とだしまた今度な」
ちょっと……正体言わないのかよ
逢坂は暁の帽子越しに頭をポンポンすると
俺に近寄り暁に聞こえないくらいの声で
「可愛い暁を泣かせたら俺が許さねーから」
強い口調だがきっぱりそう言って
手をヒラヒラしながら人混みに消えた。
「行っちゃった」
な、なんなんだよ!あれは……!
俺嫌われてる訳?てか初めて会って
そりゃないだろ!
なんだかすげームカつく男。
俺の最初の印象は最悪だった。
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