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初えっち編 3★
「力抜いてろよ」
先輩は僕の腰の下に枕を入れて腰を上げさせると、ローションで濡らした指で後ろの穴に触れてきた。
想像はしていたものの、さすがに自分でそこまではいじったことがなかった僕は、緊張で体がこわばりそうになるのをなんとかこらえ、先輩に言われた通りに力を抜く。
ローションのおかげか、覚悟していたような痛みはなかった。
それよりも、あの素晴らしいマンガを生み出す先輩の指先が、僕のあんなところに入っているのかと思うと、いたたまれないやら嬉しいやらで気が変になりそうで、正直体の感触どころではない。
などと、悠長なことを思っていられたのは、ほんの少しの間だけだった。
「……っっ!」
体の中でいきなりとんでもない快感を得て、僕はびくっと体を震わせ、文字通り声にならない声を上げる。
僕のあまりの過敏な反応に驚いたのか、先輩も僕の中で動かしていた指をぴたっと止めた。
こ、これが噂の前立腺……。
一応オタクの知識として、そういうものの存在は知っていたのだが、こんなエロマンガみたいな強烈な感じ方をしてしまうものだとは知らなかった。
呆然としていたのもつかのま、止まっていた先輩の指が、容赦なくその前立腺を刺激してきて、僕は再びエロマンガそのままの恥ずかしい喘ぎ声を上げる。
「そろそろ、いいか?」
強烈な快感に息も絶え絶えになっているところにそう聞かれ、僕はよく考えられないままにがくがくとうなずいた。
「…ぁんっ」
いきなり中の指を抜かれて声を上げた僕にはかまわず、先輩はさっさと自分の服を脱ぎだした。
僕にとっては垂涎ものの先輩の裸体は、体についたきれいな筋肉だけではなく、股間についたモノまでが僕とは比べものにならないくらい立派だった。
その立派なモノはすでに準備万端勃ち上がっていて、僕は無意識のうちにごくりとつばを飲み込んでいた。
「いくぞ」
先輩はその立派なナニにもローションをたっぷり塗ると、僕に覆いかぶさってきた。
僕が小さくうなずくと、先輩は僕の後ろの穴に押し当てたものを、そのまま一気にぐいっと押し込んだ。
「うっ」
その途端、僕たち二人の口から同時にうめき声が漏れた。
これは苦しい。
苦しくないはずがない。
だいたいあんな立派なものをあんな小さいところに入れるなんて、普通に考えたら無理に決まっている。
苦しいのは僕だけでなく、先輩の方も同じらしい。
僕の方がきつきつのいっぱいいっぱいで苦しいのだから、そこをいっぱいにしている先輩のモノだって締め付けられて苦しいのは当然だ。
「ちょ……高橋。
もうちょい緩めろ」
「ゆ、緩めろって、どうやって……」
「あ-、うーん……どうやれば……。
あ、そうか」
先輩はちょっと考えた後、いきなり僕のモノに手を伸ばしてきた。
「あっ!」
苦しさと痛みで萎えかけていたものの、そこを触られれば、さすがに快感を覚える。
すると同時に快感のおかげで力が抜けたのか、後ろの苦しさがちょっとましになった。
「えっ、ちょっと先輩、待って、だめっ…んっ……」
楽になったと思った途端、先輩は僕の中を一杯にしているモノを抜くのではなく、逆に思いっきり押し込んできた。
「悪い、高橋、ごめん、ごめんな。
でも、無理。
俺もう、がまん出来ない」
先輩は謝りながらも、容赦なく腰を動かしてくる。
それと同時に手の中の僕のモノも荒々しく擦り上げてきて、僕は苦しいやら気持ちいいやらで、めちゃくちゃになってしまう。
「…くっ……」
やがて先輩は小さくうめき声を上げると、急にずるっと僕の中から自分のモノを抜き出した。
その途端、太ももの辺りにぬるっとした熱いものがかかった感触がして、先輩がイッたのだと分かる。
それに気付くと同時に、僕もまた、ふたたび先輩の手の中に先輩と同じものを吐き出していた。
ぐったりとしている僕に、先輩は優しく、触れるだけのキスをしてくれた。
そうして甘い声で「愛してるよ」と囁くと、うっとりするような笑顔で微笑んだ。
あまりにも嬉しすぎて舞い上がっている僕を、先輩は「再現はここまでな」という一言で容赦なく現実へと叩き落とした。
「ありがとな。
高橋、体は大丈夫か?」
「あー、たぶん大丈夫かと。
まだなんか入ってるみたいな感じはしますけど、もう痛くはないんで」
人体とは本当にすごいものだ。
あれだけ無茶なことをされたのに、もう何ともないなんて。
それともこれはローションのおかげなんだろうか。
「ほんとごめんな。
お前が痛がってるのは分かってたけど、お前の中、あんまり良すぎて、どうしても我慢できなくて。
悪かった」
「気にしないでください。
その……痛かったけど、僕もちゃんと気持ち良かったし」
それに気持ち良かっただけでなく、大好きな先輩に最後まで抱いてもらえて、先輩にも僕の体で気持ち良くなってもらえた。
これが同人誌の再現じゃなくて、本当のことだったらもっと良かったと思わないではないけれど、再現でも十分、僕にとっては幸せだった。
「そっか、なら良かった」
そう言うと先輩はまた、あのうっとりするような素敵な笑顔で微笑んでくれた。
そうして先輩は、お互いが出したものでどろどろに汚れてひどいことになっていた僕の体とシーツの後始末をしてくれた。
先輩に言われるままに、僕は新しいシーツがかかったベッドの上でタオルケットにくるまって、だるい体を休めていた。
「これ、約束の本な。
ちょっと待ってくれるんだったら、新しいのプリントアウトしてもいいけど」
「いえ、これでいいです。
ありがとうございます」
これでいいと言うより、正直に言えば新品よりも先輩がオカズに使っていたこの本がいい。
僕は先輩から本を受け取って、ほくほくしながら読み始めた。
すでに下だけは服を身につけた先輩は本棚からマンガを出して、僕の側の床にベッドに寄りかかるように座って、僕と同じようにマンガを開いた。
先輩の作品は、エロでも僕がモデルのオリジナルでも、やはり素晴らしかった。
先輩が描く『祐人』というキャラは初々しいのにエロくて、マンガという限られた世界の中で生き生きと輝いていた。
そこには先輩らしいキャラクターへの愛があふれていて、その『祐人』は僕がモデルというだけで僕自身ではないと分かっているにもかかわらず、僕は感動のあまり泣きそうになってしまった。
そして驚いたことに、特に打ち合わせをしてなかったにも関わらず、挿入するまでの展開は、解すのに僕が出したものではなくローションを使ったこと以外は、セリフも含めてほぼ完璧に再現できていた。
僕って、ものすごくテンプレなやつだったんだ……。
オタクとしてそれは喜ぶべきなのか、どうなのか、ちょっと複雑な気分だ。
ちなみにマンガの中の『祐人』は挿入してからも特に痛がることなく、気持ちよさそうにアンアン喘いで、後ろの刺激だけでイッていたのだが、さすがにこれはいくらテンプレでも再現出来なくても仕方ないと思う。
「先輩、次の取ってもらってもいいですか?」
もらった同人誌を二回繰り返し読んで思う存分堪能した僕がそう言うと、先輩はマンガから顔を上げて僕を見た。
「は? 次?」
「はい、さっきはちらっと見ただけだったんで、『セーラー服緊縛編』がいいです」
「あー、だめだめ。
そんなもん、再現一回につき一冊に決まってるだろ。
他のも読みたかったら、また今度、別のやつの内容再現してからだ」
「え! うそ!
あんな痛い思いしたのに一冊だけなんですか?
先輩のケチ!」
そう文句を言いながら、僕は嬉しくてにやにやしてしまうのを止められなかった。
今日一回だけじゃなくて、また再現させてくれるんだ。
コピー誌はたぶん4、5冊はあったから、最低でもあと3、4回は先輩に抱いてもらえるんだ。
「だーめ、今日は一冊だけ。
だいたいお前だって気持ち良かったって言っただろ。
とにかく、再現一回につき一冊な。
今日のでまたインスピレーションわいてきたし、なんだったらまた新しいやつ描いてやるから」
先輩の言葉に、僕はまた有頂天になる。
新しい本を描き下ろしてくれるなら、もっともっと何回も、先輩に抱いてもらえるかもしれない。
「ううー、仕方ないですね。
分かりました、一冊で我慢します。
その代わりに描き下ろしは扉絵ちゃんと描いてくださいね。
出来ればカラーで」
「おう、わかったわかった」
僕が仕方なくというふうを装ってそう答えると、先輩は機嫌よさそうに安請け合いしてくれた。
再現するのが楽しかったのか、それとも僕の体が良かったのか、どっちにしろ先輩が喜んでくれているなら僕も嬉しい。
こうして、僕と先輩の、ちょっとエッチでおかしな関係は始まったのだった。
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