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先輩の同人誌 1☆
決死の突撃の甲斐あって、先輩はまた僕を呼び出してくれる気になったらしい。
あれから何日か経ったある日、「もうすぐ新作書き上がるから、明後日の夜、暇だったら来ないか」というメールが来た。
僕は大喜びで「もちろん行きます!」という返答と行ける時間を書いてメールを返信する。
メールを返信した後、僕はすぐに作業に戻った。
前回の再現の時、もしかしたらちょっとは脈がある?と感じられたのだが、先輩の腕枕にやられてめろめろになってしまい、告白するなど具体的な行動につなげられなかった。
そこで次回こそは勇気を出して告白したいと思い、僕はその弾みを付けるために、あるものの準備を進めていた。
もうだいたいの目処はついたから、たぶん明後日までに仕上げることが出来るだろう。
もうひとがんばり、と僕はパソコンに向かって作業を続けた。
約束した時間に先輩の部屋に行くと、ドアを開けてくれた先輩はなぜか慌てた様子だった。
「悪い、まだ出来てないんだ。
あと5分、いや、10分で出来るから、ちょっと待っててくれ」
そう言うと先輩は、僕の返事も待たずに大急ぎでパソコンデスクに座った。
先輩の方から指定した日に出来上がってないなんて、新刊を落としたことがないと豪語していた先輩にしては珍しい失態だ。
けれども先輩には申し訳ないけれど、僕にとってはその方がかえって都合が良かったかもしれない。
「あの、先輩、新作まだ出来てないんだったら、代わりにこれを再現してもらえませんか」
そう言って僕は、用意してきたコピー誌を カバンから出して先輩に 差し出した。
「え、これ、お前が描いたのか?」
「はい」
「読んでいいか?」
「はい」
返事をしつつも、僕は怖くて先輩の顔がまともに見られなかった。
コピー誌の中身は、僕が描いた先輩と僕をモデルにしたエロマンガだ。
先輩の本とは逆に、先輩のエロさを前面に押し出したマンガは、特に印象的なシチュエーションでもないし、タイトルも扉絵もなく、僕の画力のせいもあって先輩の本の足元にも及ばないクオリティだ。
けれども出来はイマイチでも僕なりに精一杯がんばって描いたものだし、先輩への愛だけはたっぷり込めている。
先輩の反応が恐ろしくてうつむいて立ったままでいると、マンガを読み終わった先輩が本を閉じた。
椅子に座ったままで顔を上げた先輩と目が合ってうろたえてしまったが、先輩の表情から嫌悪は感じられず、むしろ真剣な表情だったので、僕は恐る恐るではあったが先輩と視線を合わせた。
「これ、再現してもいいんだな?」
「……はい」
「分かった。
じゃあやろう」
「……はい!」
先輩の短い言葉に、僕の心は一気に浮上する。
舞い上がってる僕の目の前で、先輩は立ち上がった。
そうやって向かい合うともう、そのまま再現が始められる体勢になっていた。
「先輩、今日は僕の好きにさせてもらってもいいですか?」
緊張でうわずった声で、僕は最初のセリフを口にする。
「ん? もしかしてお前、俺に入れたいの?」
「いえ、まさか、そこまでは。
けど僕、いつも先輩に気持ち良くしてもらってばかりだから、今日は僕が先輩のことを気持ち良くしてみたいなって思って」
それはマンガのセリフを借りた僕の本心だった。
先輩のモノを触ったり、フェラチオする機会があったこともあって、最近ではもっと僕の方から積極的に先輩のことを気持ち良くしてみたいという欲求が高まっていたのだ。
「なるほどな。
そういうことならいいぜ。
お前の好きにしてみろよ」
「ありがとうございます!」
僕はマンガの通りだが演技ではなく喜んで、先輩の首に抱きついた。
先輩も僕のマンガ通りに、目を閉じて少しうつむいてくれる。
初めてする僕の方からのキスに、僕はすぐに夢中になった。
先輩の柔らかい唇を味わい、先輩の口の中に僕の舌を差し入れ、そこを思うさまに蹂躙する。
いつも先輩にされていることを、今日は僕がしているのだと思うと、興奮しすぎて、酸欠でくらくらしそうだ。
時折、先輩の喉の奥から小さな音がしたり、呼吸が乱れたりして、僕ほどではないかもしれないけれど先輩も感じてくれているのがわかって、僕はいっそう夢中になってキスを続ける。
僕が唇を離した時、目を開けた先輩は色っぽい表情でため息をついて、ちゃんと感じてくれたことを証明してくれた。
けれどもたぶん、僕の方が先輩よりももっと感じた顔をしているのだろうなと思うと、ちょっと恥ずかしい。
「どうした?
もっとしてくれるんだろ?」
「あっ、はい」
自分で描いたはずなのに、素でうっとりしていた僕は、先輩のセリフにちょっと慌ててしまった。
気を取り直して、僕は先輩のシャツとズボンを脱がせにかかる。
自分でやってみて初めてわかったが、人の服を脱がせるというのは意外と難しい。
もちろん先輩は協力してくれたけど、シャツのボタンはいつも自分ではずすのとは反対ではずしにくかったし、うっかり袖のボタンをはずし忘れて、袖がひっかかってわたわたしてしまう。
そんな僕を先輩がなんとなく微笑ましいものを見るような目つきで見ているのに気付いて、僕はよけいに動揺してしまう。
それでもなんとか先輩を下着だけの姿にすると、僕は先輩の手を引っ張ってベッドに横になってもらった。
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