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第9話
貴方が好き………
弱った所にそっと手を差し出されてしまえば
ずっと抑えてきた想いが抑えきれなくなって
今言わなくてもいい事を口走ってしまう
「ずっと好いておりました
海影さんが私の金剛になって下さって
いつからか恋心を抱くようになりました」
「雪路………」
名を呼ぶ海影の声から戸惑う様子が伝わってくる
それでも想いは止めどなく溢れてくる
「好きです……好きです……」
それから暫く海影は無言のままだったが
泣きじゃくる雪路の背にそっと手を添える
「もう寝なさい………
一刻も早く傷を癒し仕事を再開しなければなりませぬ故」
「海影さ………」
海影はこれ以上何も言うことはなかった
嗚呼、失敗してしまったと思った
こんなこと言っても迷惑でしかないのに
この曇ったままの心で雪路は疲れからすぐに眠ってしまった
翌日、目を覚ますと隣に海影はいなかった
もしかして自分の前から消えたのではと不安に駆られ探しに行こうと立ちあがり襖を開けようと手を掛けるがその前に襖が開き海影が目の前に現れた
「雪路、起きていたのですか
傷はどうです?………雪路?」
「海影さんっ……」
すると雪路は海影の胸に飛び込み涙が零れる
いなくなったかと焦った
温かい彼の体温が愛おしい………
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