12 / 16
第12話
海影に貰った大切な根付け
高価な品は客から何度も贈られた事はあるが
そのどんな物よりも大切だと思ったこの小さな根付け
大切だと思っていたのに今はこれを見るのが苦しい
だから雪路はその根付けを窓の外へと投げ捨てた___
彼が傍にいないのなら持っていても苦しいだけ
いっそ捨ててしまえば楽だと思ってしまった
すると部屋の外で足音が聞こえた
「雪路、私です、入りますよ」
そう海影の声が聞こえ雪路の返答も待たずに入ってきた
「海影さっ……」
「楼主様に取り合ってみましたが外す気は無いとの事でした」
「そう、ですか………」
それを聞いて雪路は嬉しい筈なのに胸がズキズキと痛んだ
たった今根付けを捨ててしまったと言うのに
「私は……
ただの金剛でしかありませんし
ここでしか生きていけません……」
海影はぽつりぽつりと雪路に話し始めた
「ですが貴方は……
貴方ならば将来身請けされる可能性がある
我々にはその拒否権はない
もし貴方が私への想いを持ったままならば
苦しいだけです
陰間が幸せな人生を歩めるとは思いません
色んな人を見てきましたからね
ですから貴方には少しでも良い人生をと……」
「海影さん………私………」
知らなかった
彼が自分の事をそんな風に考えてくれてること
ともだちにシェアしよう!