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第11話
※律視点
「そんなに不味くはねーと思うから」
そう言ってちょっと怖い方のお兄さん……若さん?がぼくの所にご飯を持ってきてくれた。
食べてもいいのかな。
若さんの顔を見つめてみる。
「見られてたら食いにくいよな」
少し離れた所で、ぼくを見ている若さんはそれ以上何も言わなかった。
おとーさんもお父さんもお父さんの友達も、ご飯を食べる前にちゃんと言うことを聞くか確かめてからじゃないと、ご飯をくれなかった。
だから、食べる頃にはいつも冷めてた。
けど、今日のは温かくて美味しそうな匂いがする。
くんくんと嗅いでみたら、お腹がくぅと音を立てた。
ぼく、待て出来るよ。
そう思って若さんを見たら「食っていいんだぞ」と少し笑ってくれた。
だから、お椀に口を近付けて食べようとした。
そしたら。
「あ、おい!」
若さんが大きな声をあげる。
叩かれる!!
そう思って、きゅっと体を丸める。
「何があったんですか!」
みやびお兄さんが駆け込んできて、ぼくの所に来てくれる。
「犬食いくらいで大きい声出さないでください」
みやびお兄さんは何故だか、ぼくじゃなくて若さんに怒ってた。
大丈夫だからね、ってぼくが溢したご飯を片付けてくれる。
若さんもごめんって言いながら、ぼくに手を伸ばす。
やっぱり叩かれるのかな、そう思ってまた体をぎゅっとする。
でも痛いのは来なくて、あったのは若さんの悲しそうな顔だった。
なんで若さんがごめんなさいするんだろ。
なんでそんな悲しそうな顔するの?
「律君をいじめる気はないんだよ」
律ってぼくの名前?
いじめる気はないって痛くしないってこと?
みやびお兄さんが言うなら、そうなのかな……。
そう思いながら若さんを見る。
戸惑った顔をしていた若さんは「そのな、律」とぼくの目を見た。
「懐けとか言うこと聞けとか、そういうことを言うつもりはない。俺はただ、お前が笑顔でいられる日が来れば良い」
それだけなんだ、ってじっと見つめられた。
その目がとっても、優しくて温かく見えてちょっとだけ怖くなくなった。
そしたらみやびお兄さんが「今度はスプーンで食べようか」って、お椀を取ってくれた。
ぼく、イヌなのにみんなと同じ食べ方していいのかな。
そう思ったけど、温かいお粥をみやびお兄さんが向けてくれて、お腹ペコペコだったぼくは恐る恐る口をつけた。
……美味しい。
つい、もうひとくちぱく、と食べちゃった。
「良かったですね、昴さん」
みやびお兄さんは若さんに向かってそう言った。
あれ、若さんてお名前二つあるのかな……。
けど、半分も食べないでお腹いっぱいになって、ごめんなさいしようと思ってたら、みやびお兄さんが「気にしなくていいよ」って言ってくれた。
若さんはお風呂用意してくるっていなくなっちゃった。
久しぶりにお腹いっぱい食べれて叩かれなかった。
そう思ったら、急に目の前が見えにくくなる。
頭がちょっとふわふわして、体を起こしてるのが大変になった。
そっかあ、ぼく眠ってたのかなあ。
けど、そんなに怖いゆめじゃなかったから、また見れるかなあ。
そう思ってぼくは目を閉じた。
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