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君を待つ家 7
「そうか、そういうことだったのか」
kaiが詳しく話してくれた手紙の内容に、激しく心が揺さぶられた。でも俺がそんな立派な強い将軍の生まれ変わりだなんて……やはり信じられない。
だって俺はどこまでも弱く……流され穢れているから。
「でもさ、少し意外だな。俺はあのヨウ将軍の生まれ変わりならもっと屈強な男を想像していたんだ。だから洋先生に最初会った時、『you』と言葉の響きが同じでも、全然ピンと来なかったよ」
「ふっそうだよね。俺自身もそう思う。最近になって俺は誰かの生まれかわりで、誰かの想いを継いでいたとは思ったけれども……それがそんなに立派な人物だったなんて、正直ピンと来ない」
「でも洋先生、意外とそういう強い男ほど、心の内側はガラスのように脆いのかもしれないよ。洋先生の印象はガラスのように壊れそうな儚い感じだけど、それはもしかしたら、ヨウ武将の心の内側を引き継いで表に現れたのかもしれないぜ」
「心の内側?」
「例えば、本当にありたかった姿とか願いとか……そういうの感じない? 」
本当にありたかった姿。俺が出来たのは丈に俺の綺麗な躰……初めてを捧げられたこと。丈に甘えられていること。
過去のヨウ……君の心はこんなことを望んでいたのだろうか。
ずっと守り抜いた貞操だったのに、あんなにも簡単に丈になら、何をされてもいいとすら思った。丈には無条件に甘えてしまう、甘やかされてしまう気持ち。
「……あ、うん、なんとなく分かる」
「でも、まさかヨウ将軍の生まれ変わりの人が、こんなに綺麗な人だったなんて俺までときめいてしまうな~それじゃまずいよな!」
「っつ!馬鹿!」
kaiはいつもの調子で俺を揶揄い出す。これではどちらが先生でどちらが生徒だか分からない。でもkaiと話すのは楽しい。まるで友達みたいだ。ずっと心を許せる友は安志しかいなかった。もしかしてkaiもそういう友達になるのだろうか。
「あっ! ヨウ将軍の墓には何て書いてあった? 俺には難しくて解読できなかったから、教えてくれないか」
「いいよ。それじゃ今度、俺の家にその手紙を見に来て欲しいな。その時ゆっくり解説するよ。それから洋先生じゃなくて洋って呼んでもいいか。俺達は親友だったのなら、先生は余所余所しいよ」
「あっ……うん。いいよ」
『洋』と呼び捨てにされるのは、久しぶりだ。丈と安志以外の人物との接触を極力避けて来たから、少し恥ずかしいような嬉しいような。とにかく帰宅したら真っ先にこの話を丈に伝えよう。きっと驚くだろう。
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