239 / 1585

第5章 プロローグ

  ー太陽と月ー  ある日  船上で太陽のような君と出会った。  その笑顔は俺にとって眩しい位に明るくて、思わず顔を背けたくなった。帽子を目深にかぶり人目を避けるように影を歩く俺と、両親と手をつなぎ明るい笑顔の君とでは……別世界だと自分を卑下してしまった。  そう思って冷たく突き放したのに、君は何度も何度も俺にその小さな手を差し伸べてくれた。  ある日  小さな君の手を握ってみたら、陽だまりのように暖かかった。  その暖かさに、濃い血のつながりと縁を実感した。  俺の小さな従兄弟……君はまるで俺の分身のようだ。  太陽のような涼  その光が輝きを失わないように。俺が穢されてしまった人生……君にはそんなことが起きないように。  月のようにひっそりと陰ながら見守っていきたい。そして俺も今度君に会うときは、笑顔で向かい合いたい。 **** 『重なる月』の第五章に入ります。第五章の主人公は洋と涼です。もちろん丈も安志くんも出てきます。安志編と本編が重なり合っていくイメージで、お話しを進めようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

ともだちにシェアしよう!