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◆600話達成記念◆完結後の甘い物語 『流れる星 8』
こちらへの加筆転載が600話を超えました。今日は記念で甘いお話しです♪
第一部完結後も引き続き読んでくださってありがとうございます!リアクションにも感謝♡
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【R18】
自然な流れだった。どちらからともなくテーブルの横に敷かれた布団に横たわった。
こうすると、端正で男らしい丈の顔がよく見える。横になって見つめ合うと、少し恥ずかしかった。
「丈……改めて今日からよろしくな」
そう言いながら、丈の背に自分から手をまわした。
「洋……ありがとう」
今度は丈の長くて繊細な指が俺の頭を抱え込み、ぐいっと引き寄せられた。
二人は吸い付くように自然と唇を重ねた。人の温もりというものが、こんなに甘く優しいなんて……そう考えると何故だか、突然泣きたくなった。すると目蓋に丈の舌が触れ、滲み出たばかりの涙を零れ落ちる前に吸い取ってくれた。
「あっ……」
その唇は、やがて耳朶を舐めはじめる。舌先で耳の形に沿いゆっくりと動かされると、下半身がじんじんと甘く痺れ出してしまう。
「俺……丈に巡り逢えて良かった」
この一言が、素直な気持ち。
もっとこれからは声に出して行こう。出さないと伝わらないことが、この世には沢山あるのだから。
「洋のこと、もう離さないからな」
「あぁ、ずっと共にいるよ」
「愛している」
丈のストレートな想いを受け止め、はっと薄く開いた唇を割られ、丈の舌が潜り込んでくる。それからは夢中で互いの手で、躰を愛撫しあった。
丈の外科医として鍛えられた筋肉の盛り上がりを確認するように、ゆっくりと手を這わせ触れていく。一方……丈は俺の薄い肩や脇腹に大きな手で包み込むように這わせて来る。
人肌が心地良くて、だんだんと俺も丈も興奮してくる。
丈が黒豹のようにしなやかに俺に覆い被さり首筋に吸い付くと、ピリッとした甘い痛みを感じた。
「痛かったか」
「いいよ……つけて。今日は丈の印をつけてくれ」
あの日かき消されてしまった甘い所有の印は、再び蘇える。
唇であちこちを吸われながら、やがて浴衣の前を大きく開かれ、胸の小さな尖りにも触れられた。そこは丈によって、すっかり弱くなってしまったところだ。丈の長い指先が、器用に弧を描くように撫でて来ると、ぷっくりと芯を持ってそこは尖り出す。
こんなところが、こんな風になるなんて……疼く気持ちがたまらなくて、俺はつい身をよじってしまう。柔らかい熱をもった舌で、そこを丹念に舐められ吸われてしまうと、もう震えが止まらなくなる。
「洋の躰はいやらしくなったな。もうこんなに感じているのか」
「いちいち言うな……もう……あうっ」
カリッと尖った乳首を優しく甘噛みされれば、声が外に漏れだしてしまう。
「ふっ……あぁ…くっ…」
寺の離れの造りは防音が甘く、声が外に漏れてしまう。そのことがいつまでたっても恥ずかしく、思わず自分の口を手の甲で覆った。
のしかかってくる丈の躰も、燃えるように熱いよ。いつも冷静で大人っぽい丈が、俺の上では全くの別人だ。
激しく情熱的に一途に求められる喜び。
誰かにこんなに愛され必要とされる喜び。
そう感じられるのは、全て丈だからだ。
遠い昔の彼らの想いを、俺達は今日もこうして繋いでいく。
ぴたりと合わさった躰に、丈の欲望の高まりを肌で感じる。そして俺の興奮も丈へと伝わっていく。
「洋……」
求められるように呼ばれ鎖骨の上あたりとジュッと吸われると、動脈から生きている鼓動を感じた。
「あっ……うっ」
俺は両腕を開き丈の背中にまわし、必死にしがみつく。すると丈の手が俺の尻を割って、丈にしか見ることのない大切な部分に触れて来た。
「ふっ……あぁっ」
いつのまにか濡らされていた指先で少しずつ広げられて行く。俺が震える様子を丈が暗闇の中で、じっと見ている。その視線を感じ急激に恥ずかしくなってしまった。
「丈、もう……そんなに見るなよ」
さっきから丈の手は、張り詰めた俺のたかまり辺りを、触れそうで触れない距離で行き来している。そのもどかしい気持ち。じれったい気持ちに、つい自然と腰が揺れてしまう。
「もしかして……焦らしているのか」
「ふっ今宵は長い。洋の可愛い顔をじっくりみたくてな。まだイクなよ」
「うっ……ひどいな。意地悪だ」
「知っているだろう」
そう言いながらなだめられるように、髪の毛を指で梳かれると、ほっとした。
ここが俺の場所なんだ。
ずっと俺は自分の居場所を探して生きて来た。どこに行けばいいのか分からず、この世から消えてしまいたい日もあった。人から隠れて避けて目立たないように生きた時期もあった。
今日という日を迎えるまでに、本当に様々なことをに乗り越えて来た。
全てを忘れるわけではないが、もう過去にしよう。やっと見つけたこの場所で、俺は今日から生きていく。
改めて今宵、丈に抱かれながら心に誓うこと。
今度は丈の手が、的確に俺のたかまりを捉えてくる。躰の中心を丈の大きな手のひらで握り込まれると、欲望が弾けだす。
丈が欲しくて、早く欲しくなってしまう。俺の中の秘めたる欲求が目覚めてしまう。
「丈……駄目だ…もう」
「もう少し待て」
ゆっくりとした動きで、しごきあげられていく。
「んっ……くっ…あぁ…」
水音が静かな部屋に聴こえてくる。その音により、俺から溢れるトロトロの蜜が丈の手を濡らしていくのが分かる。さらに首筋を吸われながらもう一度強くしごかれたとき、頭の中が真っ白になり、大空へ飛び立つような感覚を覚えた。
「あっあ!」
上空に上がれば見えてくるのは、夜空に白く大きく架かる橋。
あれは※「かささぎの橋」だ。見たこともないものを俺はなぜか知っていた。そしてその理由も知っている。
そうか今日は七夕だからなのか。
「洋……幸せになってくれて、ありがとう」
声がする方を振り向けば、桔梗色の直衣姿の洋月の君が微笑んでいた。
「洋月……君が何故?」
彼の美しい唇はゆっくりと動き、和歌が詠みあげられた。
『天の川 あふぎの風に霧はれて 空すみわたるかささぎの橋』
拾遺和歌集・清原元輔
『洋、久しぶりだね。さか見てご覧よ。天の川は扇で煽いだ風によって霧がすっかり晴れ渡ったよ。ほら七夕の空は澄み渡って鵲の橋もくっきりと見えるだろう』
「洋月、本当にその通りだ。今日の俺の心はどこまでも澄み渡っているよ」
『良かった。もう俺たちは逢わなくても大丈夫だね。君が幸せになったのを見届けられたから。俺の幸せは時代を経てまた君に届くよ。君が幸せになってくれたから、俺達も幸せになれた。俺達は深い縁で結ばれていた』
「洋月ありがとう。遠い世界から逢いに来てくれて」
『洋のおかげだよ。あの日俺を帰してくれたから、今がある。本当にありがとう』
霞のように消えていく洋月の姿。
覚えておこう。今日という日をしっかりと覚えておこう。この先何があっても、今日の歓びを忘れずにいればきっと乗り越えていけるから。
「洋……大丈夫か…もう」
はっと我に返ると、男らしい色気が溢れ出している丈と視線が絡み合った。
「いいよ。来てくれ」
丈の好きにしていいから。
俺の内股に丈が手をかけて、大きく持ち上げられ露わに開かれる。何もかも隠せない。すべて見えてしまう。いつになっても慣れない恥ずかしさに、つい顔を背けてしまう。
そしてその姿のまま、丈の一部が躰の中に、ぐっと圧をかけながら沈み込んで来た。
「くうっ!」
背中を大きく反らせながら、俺はそれを受け止めていく。疼きながら跳ねる腰は、丈の手によって動ないように強くシーツに固定されてしまう。
「ん……っつ」
何度重ねてもその瞬間の衝撃には慣れない。だが丈の躰の温度を、じわじわと俺の内部で感じる頃には気持ちも馴染んで行く。丈の熱は俺だけに向けられ、それを俺の躰で受け止められることが嬉しいから。
「丈……好きだ」
丈だけだ。生涯……丈だけだ。
その想いをこめて俺の方から口づけをすると、俺の中に入り込んでいる丈が更に一回り大きくなったのが分かり、羞恥に震えた。
大きい。圧迫感がさらに増していくのに動揺してしまう。
「駄目だ。もう……それ以上は無理だ」
「洋が煽るのが悪い」
ふっと優しく微笑みながら、丈が腰を揺らしてくる。
やがてシーツに打ちつけるように何度も激しく上下していけば、俺はもう荒ぶる熱を受け止めるのに必死で、さっきまで堪えていた声もどんどん漏れてしまう。
「あっ……あっ…あつい……丈の」
「洋……洋」
丈に名前を呼ばれるのが好きだ。
これからは俺はすぐに答えられる距離にいる。
七夕のように一年に一度じゃない。
今日からはすぐ隣にいる。
共に生きていく。
今日架かった絆の橋は、もう消えることはない。
「丈……生涯一緒だ」
何度でも言うよ。伝えよう。
「もう俺達は離れることはない」
『流れる星』了
※「かささぎの橋」とは、中国の伝説によるもので、七夕の夜に天の川にかかる橋をいい、鵲の群が翼でつくるといわれています。
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