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完結後の甘い物語 『蜜月旅行 19』

 翠兄さんを横抱きにしながら、目的の岩場に辿り着いた。間近で見る岩場は形状が思ったよりも複雑で、背を覆う程の高さの凹凸があった。  すぐに左右の岩場をざっと確認したが、丈と洋くんの姿は見えなかった。  おかしいな。此処にいると思ったが見当外れだったか。二人で岩場で変なことをしていないか心配したが、どうやら余計なお世話だったようだ。  そう思うと少し残念なような、ほっと安堵するような複雑な気持ちになってしまった。 「兄さん、ここでいいか」  そのまま兄さんを岩場にそっと下ろし、腰かけさせた。 「ありがとう。流」  さっき溺れかけたせいで、頭までびしょ濡れの兄さん。その綺麗な形の額に髪の毛が貼りついて、なんだか妙に色っぽい。いつまでも見つめていたい。  そんな衝動に駆られたが、兄さんとバチっと視線がぶつかると、やはり気まずくて、ふっと視線を海へ外した。  駄目だ。これじゃ中学生の時と何も変わらないぞ。少し頭を冷やせ。  今回の日常とかけ離れた旅行なだけでも充分興奮しているのに、丈と洋くんの熱々っぷりにあてられ過ぎたな。  まだ旅行は始まったばかりだ。しっかりしろ!少し頭を冷やそう。こんなことでは今まで培ってきたものが全て台無しになってしまう。 「兄さん、俺は少し泳いできていいですか」 「もちろんだよ。流は泳ぎが得意だものな。僕はここで見ているよ」  兄さんは昔を懐かしむような表情を浮かべていた。  小学校の時にプール教室に通い出したのをきっかけに、俺は泳ぎに夢中になった。だから中学校以降は、ずっと水泳部に所属した。泳ぐのがとにかく好きだ。「流」という俺の名の通り、水の流れに躰を預ける瞬間が好きだった。 「じゃあ、見ていて下さい」  昔から大きな大会の時には、必ず兄さんが都合をつけて応援に来てくれた。  翠兄さんの静かな眼差しを競技会場で見つけると、すぅーっと心が落ち着いていくのを感じた。同時に兄さんが観てくれているから、絶対に勝ちたい。いい所を見せたいという衝動に駆られた。  あの頃の純粋な気持ちを思い出し、邪念を振り払うように、俺は海へとザブンっと勢いよく潜った。 **** 「あぁっ!」  腰を両手で押さえられたまま、あまりに激しい突き上げを受け止め、頭も躰もついていけない程だった。  目の奥がチカチカしたと同時に、俺の躰の奥深くが、丈の弾けたものを全て受け止め、ぐっしょりと濡れたのを感じた。  前後して俺自身も欲望を一気に吐き出したようで、気が付くと自分の腹と太腿がベタベタと不快だった。 「はぁ……はぁ……苦しいよ」  丈の胸に汗ばんだ背中を預け、粗い息を吐く。  こんな場所で体力を使いすぎだ。丈の馬鹿っ!  立ち上がって水着をきちんと装着してから、そう責めようと思ったのに、まだ俺の躰の中には、丈が入ったままだった。うっ……これでは身動きが取れない。 「おいっ丈……もう抜けよ。人が来たら大変だろっ」

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