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完結後の甘い物語 『蜜月旅行 23』

 一際高い白い波が、丈の背中を軽々と飛び越えてやってきた。白い波は俺の頭の上で、暴れるようにスパークした。 「くっ!」 「…丈っ…あっ……んっ……もうイクっ!あぁっ!!」  波が躰にぶつかる瞬間、俺の内部へ抽挿を繰り返していた丈のものが熱い迸りをおもいっきり放った。同時に俺の腰も最奥をびしゃっと濡らす熱い飛沫を感じ、ぶるぶると激しく震えた。  丈のものが抜かれると、繋がっていた部分から白濁のものがドロッと溢れ出て来たが、波があっという間にすべてを攫っていった。 「あ……あっ…」  すべての欲望を吐き出しきって弛緩する躰を、丈の胸へとストンと預けると、優しく両手で抱き留めてくれた。 「洋も沢山出たな」 「丈……もう無理だからな。絶対無理だ。これ以上するなよ……もう体力の限界だよ」 「分かったよ、もうしないから安心しろ」  俺はうわ言のように呟いていた。しっかり念を押すと安心したのか、途端に心地良い疲労感を感じ、丈の胸に躰を静めてウトウトし出してしまった。 「洋、キスしてもいいか」 「ん……キスだけなら」  寝ぼけ眼で首を反転させ丈を見つめると、ぐるっと躰ごと持ち上げられ反転させられてしまった。 気が付けば、向かい合わせに丈の脚を跨ぐような体勢になっていた。  そのまま顎をクイッと掴まれ上を向かされ、海の味がするしょっぱいキスが降って来た。 「んっ……ん…」 「洋、すごく良かったよ。ありがとう」 「んっ丈、俺も……良かった」  俺の方も丈に甘えたくなり、丈の逞しい腰から尻の辺りに手をまわし、その胸に飛び込むようにぎゅっと抱き着いた。 「あれ?」    ところが腰に回した手に違和感を感じた。あるべきものがそこにはないことに気がつき、慌てて躰をはがし確認した。 「どうした?」 「なぁ丈の水着ってどこだ?」 「え……?」  慌てて自分のは無事かと確認すると、行為の最中も、言われた通りに肌身離さずぎゅっと握っていたらしく、ちゃんと手元にあったので、ほっとした。  それにしても丈の水着は一体どこへ?  あの俺に着せようと意気込んでいた、紐みたいに卑猥な水着は。 「あっ! もしかして、さっきの波か」  丈は何か思い当たるように、悔し気に呟いた。 ****  兄さんが何かを感じたようにこちらを見たので、慌てて身を隠そうとしたが間に合わなかった。岩陰に立っていた俺と視線がばっちりと絡み合ってしまった。  まずい……気が付かれたか!  兄さんは一瞬はっとした後、表情を引き締め、手を左右に振って俺に微笑んできた。そして何もなかったかのように、もう一度岩場に座り込んだ。  なんだよ! これじゃまた時間が戻ってしまった。  もういつもの翠兄さんの顔だ。いやもっと酷いな。若住職として抜かりなく取り澄ました寺での顔になってしまったじゃないか。  くそっ! そう来たか。  波が証拠を消してくれたから、何もなかったことにする気だな。  何故だか無性に腹が立った。ムシャクシャした。  むっとした表情のまま俺は海に潜った。そして翠兄さんの足元まで静かに潜水して近づき、ザバッと海面から顔を出した。 「わぁっ!」  水飛沫と共に急に現れた俺の姿にびっくりして、兄さんは岩場から足をズルッと滑らせ、そのまま俺の胸元に滑り込むように、海水の中にドボンっと落ちて来た。 「危ないっ!」  咄嗟に俺は翠兄さんの躰を抱きしめていた。  あっこれは……ずっとそうしてみたかったポーズだ。そうだ、こうやって兄さんの躰を真正面から抱きしめてみたかった。 「りゅっ……流?」  戸惑いで震える翠兄さんの声。そのまま有無を言わさずキツク抱いた。 「離してくれ! どうしたんだよ、一体っ」  俺の躰から離れようと、兄さんが必死にもがいている。だが俺は絶対に離したくなくて、力を更に強く込めた。  今……兄さんの裸の胸と俺の胸が1mmも離れない距離でぴったりとくっついている。目を閉じて神経を集中させれば、兄さんの小さな胸の突起を直に感じることが出来て、俺は身震いした。 「流、いい加減にもう離せっ! 怒るぞ!」  強い口調で窘められるが、その言葉に反抗するように俺は…… 「翠兄さん、俺は……」 「……なっ何?」  兄さんの声が強張る。  俺はここで長年の思いをぶちまけようと覚悟した。こんな機会もう二度とない。だから決心した。  深呼吸して一気に吐き出す。  ずっと心の奥底に押し込めていた……  重たい言葉。  禁断の言葉。 「兄さん聞いてくれ。俺はずっと翠兄さんのことが……」  そう言いかけた時、 「丈の馬鹿っ! なんで俺の水着を履くんだよ! 俺はっ俺はっ……どうしたらいいんだ!」  洋くんの激しく怒る声が、俺達だけの空間を見事に打ち破ってしまった。  洋くんの震える声は、怒るというよりは涙声にも聞こえたので可哀想になり、思わず兄さんを拘束する手を緩めてしまった。  はっとした翠兄さんは、俺の腕からするりと抜け出てしまった。  くそっ! 時は俺の味方ではないようだ。

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