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番外編 安志&涼 『SUMMER VACATION』9
ゴックンー
生唾を思い切り呑み込んだ。
やべっ涎垂れそうだぜ。
そして一度瞬きし目を開けた時、涼の水着はすべて下へと下がった。
うぉぉぉ~ やった! ついにやった!
歓喜の声をあげそうになった。
ふたつの水着は芝生へと放り投げられた。
夏の日差しを浴びた裸体。
水滴をまとう美しい腰のカーブ。
きゅっと引き締まったヒップ。
そしてその中央についている美味しそうな果実。
美しい顔にふさわしい、綺麗な形のそれに俺の目は釘付けだ。
ああっ~生きていてよかった。
今日は一体何のご褒美だ。
興奮冷めやらぬまま、隣の洋のことを見ると、洋もしっかりと脱ぎ終わっていた。
といっても少しだけ照れくさそうな仕草で、すぐに水の中に沈めてしまったので、水の中で肌色が揺れている状態だ。
「洋兄さんもちゃんと脱いだね!」
「うんちょっと恥ずかしいけどね。あー気持ちいい。こんな解放感久しぶりだね」
「うん!」
洋と涼が腰から下をプールの水につけて、嬉しそうに話している。
こっこれは!
すごい! 最高だ!
よーしっ! 潜って、二人の股間をしかと見てやろう!
自分の股間の高まりはそっちのけで、スケベ心に火が付いた。
「よーし、潜るぞ!!」
そう天に向かって叫ぼうと思った瞬間、後ろから誰かにドつかれた。
「へっ?」
そのまま俺は、つんのめる形で水中に沈む。
ゴボゴボゴボ……
「洋、なんだその恰好は!」
「うわっ!あぁ……丈っ」
洋の驚いた声が、水中にまで響いたような……
****
流兄さんの黒い水着を握りしめたまま、私は森を駆け抜け中庭に直接出た。
私が設置したプールに皆いるようで、ほっとした。
でも何故か……嫌な……妙な胸騒ぎがする。
洋と涼くんの後ろ姿が見えたのもつかの間、二人の手から何かが青い芝生へと放り投げられた。
「なっ何だ!あれは!」
慌てて近づいて見れば、二枚の水着が仲良く芝生に並んでいた。
「洋っ!!」
スーツのまま靴だけを脱ぎ捨て、プールの中を覗けば、真っ裸になったふたりの裸体が水中で揺らいでいた。
一番けしからん奴は、その二人の下半身を眺めようと今まさに潜ろうとしている……安志くんだ!
絶対に阻止せねば!
私はスーツのまま、飛び込んで安志くんの背中を逆方向へと突き飛ばした。
「洋、何て格好なんだ!」
叱るように声をあげると、洋は一瞬びくっとしたものの、すぐに笑った。
「丈、早かったな。はは……この格好? 笑っちゃうだろう。でもね、俺だけじゃなくて皆、裸なんだよ」
いつもなら震えあがるところなのに、これは一体? きっと何か悪いものに感化されたに違いない。
「洋、そんな姿になっていいなんて許してないぞ。私は怒ってる」
「……そうか……やっぱり怒ってるのか」
声のトーンを落として厳しく責めると、さすがに洋は少しシュンとした。
楽しく盛り上がっているのに可哀そうだとは思ったが、それとこれとでは話が別だ。
人様の前で裸体を見せるなんて言語道断!
「おーい丈。そうマジになるなって。今日は夏休み企画だろ。ほらお前もハメはずせ」
後ろから突然すごい力で羽交い絞めされた。
「うっ! な、何を」
流兄さんに後ろからすごい力で抱きしめられて、焦った!
兄さんの手は巧みに私のタイを解き、ボタンを外していく。
「ちょっと兄さん!!」
驚いて硬直してしまった。
「わっ! 流さん、それ新しい!」
洋が感動した声をあげている。
「おい、安志くん手伝え。この堅苦しい頭の奴を解してやろう! 今日は無礼講だ! 兄である俺が許可する!」
「はい! 了解っす!」
安志くんが器用に潜って私のベルトを外し、ズボンを下げていく。
彼は水中での緊急時の対応に慣れている手つきで、私はあっという間に下着姿になっていった。
「おっおい! やめろー翠兄さん助けてください!」
縋る思いで翠兄さんを見つめれば、なぜか翠兄さんまで真っ裸だった。
この兄弟は一体……
もう開き直るしかないのか。
「はぁ……わかりましたよ。郷に入れば郷に従えか。そんなに私の裸が見たいのなら、なってあげましょう。但し……この中で一番いい身体だと思いますよ」
「うん丈、いいね。その心がけは立派だ」
翠兄さんの菩薩のような声が静かに響く中、私は潔く下着を脱ぎ捨てシャツをパッと開き裸身になった。
そしてプールサイドに鍛え上げた躰を見せつけるように立ち上がった。
洋のことを見下ろして甘く微笑んでやると、今度は洋の方が真っ赤に染まった。
「丈さんの身体、すごいかっこいい。腹筋が割れてる! わあーモデルになれそうだ」
「何?涼、俺の方がすごいって、ほら見てみろよ!」
涼くんの声に煽られ、安志くんまで裸のままプールからあがり私の横に立った!
「おいおい待てよ。一番立派なのは俺だろう」
さらに流兄さんまで。
三人で並んで、裸身を見せ合った。
プールの中では翠兄さんと洋と涼くんがぽかんと、立ち尽くしていた。
なんという夏休みの幕開けだ。
まさかの裸自慢からだとはな。
私としたことが……彼らの気にやられ、あり得ない行動をしてしまった。
だが、こんなことが出来るのも心許せる仲間たちのおかげなんだ。
あとがき (不要な方はスルーしてください0
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今回はシリアスの後の娯楽企画ということで……9話もこんな話ですいません(;'∀') 次回からは甘くエロい番外編で、安志くんの見せどころを頑張りたいです。いつも読んで下さってありがとうございます。
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